生成AI(人工知能)をインターネット検索サービスに応用する動きが広がってきた。必要な情報を探す手間が減り、サービスを巡る競争を活発にする効果が期待できる一方、著作権侵害などの懸念も大きくなっている。事業者は課題に真摯に向き合うべきだ。
AI検索は利用者が文章で質問すると、報道機関のウェブサイトなどから必要な情報を探して要約文を表示する。米オープンAIのChat(チャット)GPTなどの対話型AIでは困難だった株価やスポーツの試合、ニュース速報などにも対応する。
ネット検索は従来、キーワードに基づいて関連するサイトの一覧を表示し、利用者はいずれかを訪れる必要があった。AI検索は複数のサイトが掲載した内容を要約するため、必要な情報を入手しやすくなる。
AI検索は米パープレキシティなどの新興企業が先行し、オープンAIもこのほど参入した。ネット検索で約9割の世界シェアを握る米グーグルも提供を始めている。ネット検索は長年にわたって「グーグル1強」だったが、競争が活発になって利便性が高まるのは歓迎だ。
一方で課題も多い。ネット検索は多くのサイトに利用者を送り届ける役割を果たしてきたが、AI検索で利用者がせき止められるとこの流れが細くなりかねない。事業者は出典を示して利用者に訪問を促すなど、ネット空間の多様性の維持に配慮すべきだ。
著作権侵害の懸念も拡大している。多額のコストを費やしてつくったコンテンツにただ乗りする行為は許されない。正当な対価が支払われなければ収益をコンテンツ制作に再投資する循環が弱まり、AI検索の基盤も弱くなる。
一部の事業者は広告収入を分配するといった収益還元を始めているが、海外では訴訟も起きている。動画共有サイトを巡る競争では権利者への収益分配で先行した米ユーチューブが勝ち残った。こうした事例も参考に双方が折り合える点を探るべきだ。
生成AIは発展途上のため、AI検索の結果は必ずしも正確でない。情報の取捨選択や要約はアルゴリズムが担い、特定の内容を集中的に表示するといった偏りが生じる可能性もある。原典に当たり複数のサービスの結果を比較するなど、利用者は課題を理解して使う必要がある。
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