自動車大手のホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を始めることがわかった。海外事業の失速で、業界で「一人負け」の苦境にあえぐ日産。「うまく連携できるのか」。社員、販売店の従業員らには動揺が広がった。

 京浜急行・追浜駅(神奈川県横須賀市)から東に約1キロ。商店街を抜け、しばらく進むと「日産自動車 追浜工場」という大きな看板が見えてくる。1961年に操業を始めた、主力の小型車「ノート」などをつくる「マザー工場」だ。

 18日の昼過ぎ、「NISSAN」のロゴが入ったグレーの作業着を着た人たちが出入りしていた。「朝ラジオで聞いて同僚と話していたところ」「まだ情報がそんなに入ってきていないので、何も言えない」。声をかけてもみな、言葉少なに通り過ぎていった。

 その中で、30代の男性社員は話した。朝のネットニュースでホンダとの経営統合協議の話を知ったという。「日産とホンダでは会社のカラーが全然違うと思う。うまく連携できるのか正直不安」

 日産は中国だけでなく、米国市場でも売れ筋のハイブリッド車の車種がないことなどから業績が悪化。9月には9千人のリストラや生産能力を2割減らすなどとした再建計画を発表していた。

 男性は「このままホンダの傘下に入るのではないか。統合となれば日産の社員としては寂しい」と言った。

 一方で、期待の声もあった。ホンダは二輪や航空機事業など手がける事業も広く、燃費性能の高いハイブリッド車向けの技術も強みだ。社員だという20代男性は「ホンダなら頼もしい。日産にとっても悪い話ではないと思う」と話した。

 ただ、協議の行方次第では、車種や、全国に数千ある販売店の統廃合が進む可能性もある。日産は8月にホンダとの間で「車両の相互補完」を検討すると発表。協議に合流する方針の三菱自動車とはすでに軽自動車分野などで協力関係を深めていて、今後の枠組みは見通せない。11月の軽自動車の新車販売台数では、ベスト10に3社がひしめく状況にある。

 東日本にある日産の販売店員が懸念するのが、ホンダとの関係性の「バランス」だ。「日産の強みである電気自動車などをホンダが販売することになってしまえば、私たちの売り上げが減ってしまうのではないか」と危惧する。男性は「お互いの技術を補完するような、公平な関係を築いてほしい」と話した。

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