GW明けで対応に追われる退職代行サービス「モームリ」の従業員たち=東京都大田区で2024年5月7日午前11時59分、隈元悠太撮影(画像の一部を加工しています)

 大型連休が終了し、多くの人は通常勤務に戻った。X(ツイッター)には「仕事がつらい」、「次の連休まで耐えられる気がしない」などの言葉が並ぶ。だからなのか、「今が一年で最も忙しい時期の一つ」というサービスがある。本人に代わって勤務先に「仕事を辞めます」との意思を伝える「退職代行サービス」だ。

 転・退職支援を事業とする「アルバトロス」(東京都大田区)が管理する「退職代行モームリ」の事務所。ゴールデンウイーク(GW)明けの7日、ヘッドセットを付けた社員が、ひっきりなしにかかってくる依頼への対応に追われていた。

 これまでも相談は休日明けに多く、1日当たり100件ほどになることもあるというが、この日の相談件数は夕方までに170件を超えた。

 モームリは2022年3月にサービス提供を開始した。本人に代わって「退職届を郵送します」と企業側に説明したり、パソコンなど貸与物の返却を調整したりする。この2年間で利用者総数は1万人を超えようとしている。依頼者が正社員や契約社員の場合は2万2000円、アルバイトの場合は1万2000円の費用がかかる。

 アルバトロスの谷本慎二社長(35)は「新年度から1カ月が経過したタイミングでの長期休暇です。『ひと月頑張ったけれど仕事が合わなかった』などの理由で依頼される方は多いです」と話す。

 日ごろ、社長から「殺すぞ」などと脅され、連休中に自分の環境を見つめ直して次のステップに進むためにサービスを利用したという依頼者もいる。

 連休に入る前からサービスを利用する人もおり、「入社前に聞いていた話と雇用形態が異なる」など労務環境や制度に関する不満が多い。休みに入った後の依頼者の場合は「パワーハラスメントを受けた」「仕事に行きたくない」など精神的な負担を理由に挙げるケースが目立つという。

 谷本社長はリーマン・ショックが色濃く残る12年に大手サービス業チェーンに入社した。「働き方改革」が叫ばれる前のころで、過労が原因で心身を壊した人が身近でも少なくないという。

 「当時は不況ということもあり企業が人材を選ぶ時代でした。今は労働者が企業を選ぶ時代。こうした傾向は企業の力を底上げし、労働者の働く環境も改善します。個人的には望ましい傾向だと思います」【隈元悠太】

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