新素材や材料の開発は、従来、膨大な量の実験や試作を繰り返す地道な作業がかかせませんでしたが、マテリアルズ・インフォマティクスは、AIやデータサイエンスの技術を駆使して予測をもとに仮想実験を行い、短時間で効率的に開発を行うことができるとして、企業の間で導入の動きが広がっています。

大阪で8日から開かれている素材の技術を集めた展示会でも各社が出展し、トヨタ自動車は過去の研究開発に基づいて、材料分析や実験の提案を行うサービスのデモンストレーションを行っています。

また、東京のスタートアップ企業は、自動車や半導体などさまざまな業界での導入事例を紹介しています。

一方、日立製作所グループは、2017年からシステムを提供する事業に参入し、半導体やプラスチックの材料など国内外の導入事例は数百件にのぼっています。

技術の継承にもつながるほか、データの蓄積によって予測モデルの精度もさらに高まるということです。

日立ハイテクのマテリアルソリューション部野川祐弥部長代理は「実験を10分の1にまで減らせるなど圧倒的な効率化につながる。年々、注目度と浸透度が高まっている」と話しています。

専門家「背景には技術継承の必要性も」

マテリアルズ・インフォマティクスに詳しい、明治大学の金子弘昌准教授は「素材や材料開発の分野でもインフォマティクスが最近、はやりをみせている。開発のスピードがますます求められているなかで、少ない実験回数や短期間で目標の性能を持つ素材を開発しようとAIが使われ始めている」と述べ、AIの進化によってマテリアルズ・インフォマティクスの進化と導入の動きが加速しているとしています。

その一方で、導入の広がりの背景には、技術者の高齢化や技術継承の必要性の高まりもあるとしています。

金子准教授は「技術者が退職したあとも、その知見を生かせなければ会社にとって損失になる。経験や勘も含めた暗黙知を形式知として技術伝承しやすくするきっかけにもなる。より速く、より高性能な素材を開発した企業が市場を圧巻し、そのスピード感はこれまで以上に必要になっている」と話していました。

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