非正規春闘は、パートや派遣社員など非正規で働く人が集まり、春闘の時期に合わせて賃上げを求める取り組みです。
ことしは全国でおよそ3万人が参加して、これまでに107社に対して一律10%以上の賃上げを要求しています。
交渉状況について、実行委員会が9日、都内で記者会見を開き、これまでに107社のうち55%にあたる59社から賃上げの回答があったことを明らかにしました。
中には8%の賃上げを提示した企業もありましたが、平均すると3%から4%程度の賃上げにとどまっているということです。
さらに全体の45%にあたる48社からは、これまでに賃上げの回答は得られていないと報告しました。
また、実行委員会が今月、全国の非正規労働者を対象に行ったインターネット調査では、回答があった251人のうち72%が「賃上げがなかった」と回答したということです。
非正規春闘に取り組む首都圏青年ユニオンの尾林哲矢事務局長は、「非正規労働者が戦い、賃上げを勝ち取ったことは、画期的な成果だと思っている。一方で、賃上げがなかったり、あっても少額の賃上げにとどまっていたりする企業が多く、今後も交渉を続けていく」と話していました。
また、非正規労働者として物流倉庫で働く川邉隆さんは、「春闘で歴史的な賃上げだと言われているが、われわれにとっては別世界の話のようだ。会社と賃上げ交渉をしているが、回答は全くのゼロで、団体交渉にもきちんと応じていない」と訴えました。
非正規で働く人たちは去年、労働者全体の37%にあたる2100万人余りにのぼり、増加傾向が続いていて、非正規春闘実行委員会では、引き続き賃上げ交渉を行うともに、最低賃金の大幅な引き上げも求めていくとしています。
ことしの春闘の賃上げ回答 中小企業では
ことしの春闘では、大手企業を中心に高い水準の賃上げ回答が相次ぎましたが、中小企業ではこれまでのところ平均の賃上げ率は大企業を下回っています。
労働団体の連合が5月2日時点の春闘の回答状況を集計したところ、賃上げを要求した4940社のうち、75%にあたる3733社が妥結しています。
集計によりますと、定期昇給分を含めた賃上げ額は平均で月額1万5616円、率にして5.17%と、1991年以来33年ぶりに5%を超える高い水準の賃上げ率となりました。
このうち、従業員300人未満の中小企業2480社の平均の賃上げ額は、月額1万1889円、率にして4.66%となっています。
これらは比較できる2013年以降で最も高くなっていますが、従業員1000人以上の大企業、455社の平均賃上げ率と比較すると、0.57ポイント下回っています。
今後も交渉が続く中小企業や、労働組合のない企業、非正規雇用で働く人まで、どこまで高い水準の賃上げを波及させることができるかが焦点です。
連合はことし7月に春闘の最終的な集計結果を取りまとめることにしています。
専門家「中小企業や非正規の生活実感良くなるかが重要」
労働政策に詳しい第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは、現在の賃上げの状況について「企業の人手不足や収益が改善したところで高い賃上げに踏み切った企業が多い。中小企業や非正規の人たちについても人材確保のためにある程度の賃上げに踏み切った可能性は高い。しかし、非正規の人たちの賃金水準はもともと高くなく、予想よりも長く続く物価高と比べると賃上げが追いつけていないため生活水準は苦しいままとなっている」と指摘しました。
その上で「当初、もう少し落ち着く見通しだった円安の影響が長引いて大きく物価が上がり、結果的に実質賃金が下がって経済が回りずらい状態が続いている。今後は、春闘の賃上げが日本全体に波及し、人数が多い中小企業や非正規の人たちの生活実感が良くなるかが日本経済にとっても重要だ」と話していました。
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