M&A仲介業者を通じて後継者不在の中小企業を多く買収しながら、給与遅延などのトラブルを多発させた法人グループの共同代表の男性(30)が、朝日新聞の取材に応じた。「事業再生」を名目に中小企業の買収を重ねたが、「自転車操業だった」などと打ち明けた。

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 朝日新聞の取材では、茨城県などに拠点を置く法人グループが2021年以降、飲食店や建設業者など約30社を買収。一部の会社では多額の現預金が流出し、従業員の給与や取引先代金、融資返済、年金・税金などの遅延や未払いが起きた。買収先の多くで社長に就いた法人グループの代表(64)は昨年末から行方がわからなくなり、一部の会社が警察に被害の相談をしている。

 以前は飲食店の店長だった男性は確定申告を頼んでいた税理士に誘われ、21年に設立した法人の共同代表に就いた。もうひとりの代表らの指示で買収先から現預金を引き出す作業などに携わったが、「事業再生をすると思ったのに、実態はぜんぜん違った」。結果的には「基本的にはお金を(買収先から)抜くばかり」「お金を抜いても会社の再生は当然できない」状況で、職を失った従業員や契約が履行されない前経営者らに「申し訳ないと思っている」と謝罪した。

 朝日新聞の集計では、この法人の買収先11社が営業停止となり、5社で倒産の手続きが進む。少なくとも百数十人が失職し、倒産先の負債総額は30億円規模。買収時に約束した経営者の個人保証の解除がされていない例もめだつ。(藤田知也)

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