キリンは適正飲酒だけに内容を絞ったセミナーを5月から始める

キリンホールディングス(HD)は一般企業向けの適正飲酒セミナーを5月から始める。適正飲酒だけに絞ったセミナーは初めてだ。2月には厚生労働省が飲酒に関する指針を初めて公表。他のビール大手も適正飲酒を啓発する。最盛期の夏に向けてビールなどお酒の消費量が増えていくなか、正しいお酒との付き合い方を伝える。

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「無理にすすめられた場合はあいまいに濁すことなく、断る勇気を持ちましょう。お酒を飲めないこと、飲まないことは悪いことでも空気が読めないことでもありません」。キリンHDの本社で開かれた報道向けの体験会で、キリンビールセミナー講師の後藤沙耶香さんは語りかけた。

キリンは5月から「お酒と自分と仲間を知ろう!適正飲酒セミナー」と題したセミナーを始める。1回あたり30〜50人の規模を想定し、12月までに年間25回、のべ1000人規模の受講を想定する。参加料は1人200円で、そのうち100円は飲酒運転の根絶活動をしている団体に寄付する。

セミナーでは「お酒で酔うってどういうこと?」「お酒のリスク」と題したパートを設定。お酒のリスクでは厚労省が公表した飲酒に関する指針の内容を盛り込んだ。お酒に含まれる「純アルコール量」に着目することが重要として、度数5%のビール1缶には14グラムの純アルコールが含まれることを例示。1日あたり男性は40グラム以上、女性は20グラム以上摂取すると、生活習慣病のリスクを高めるとした。

キリンはこれまでビールと食事とのペアリングやクラフトビールの楽しみ方を伝えるセミナーなどを実施してきた。キリンの担当者は「ビールセミナーにお申し込みいただいたお客様から、お酒が飲める人も飲めない人も楽しめる、学べるセミナーはあるかといったご相談をいただいており、こうした声に応える形で今回の常設を決めた」と話す。

キリンが展開するノンアルコール飲料

酒類各社も適正飲酒の啓発に取り組んでいる。サントリーは「ドリンク・スマート」とした表題を掲げ、適正飲酒内でほどほどに楽しむ飲み方を提案。4月27日〜5月6日には「のんある PICNIC FES by SUNTORY」と題したノンアルコール飲料のイベントを都立明治公園(東京・新宿)で開催。飲食店のキッチンカーとノンアル飲料とのペアリングが体験できる機会をつくった。

アサヒビールは20年から飲める人も飲めない人もお酒の場を楽しむというコンセプトのキャンペーン「スマートドリンキング宣言」を始めた。東京・渋谷でコンセプトを体現する飲食店「SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバー シブヤ)」を運営している。24年3月末には1階を立ち飲み形式に変え、若年層が気軽に立ち寄りやすくした。

サッポロビールは21年、アルコール関連問題対策のグローバルスローガンを設定。適正飲酒の啓発と不適切な飲酒の防止に取り組んでいる。首都圏の大学や企業に向けては「適正飲酒啓発セミナー」を実施しており、23年は対面とオンラインで計19回開き、約1200人が参加した。

世界保健機関(WHO)が「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を示すなど、国内外でアルコールへの逆風が吹く。アサヒビールやサッポロビールは、度数が高くアルコール依存症へのリスクが高い懸念がある「ストロング系」缶チューハイの新商品を今後発売しない方針を掲げている。アルコールを扱う企業としての姿勢がこれまで以上に求められている。

(八木悠介)

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