24年春闘の中間報告を公表する非正規春闘実行委員会のメンバーたち=千代田区で2024年5月9日、東海林智撮影

 低賃金で雇用が不安定な非正規労働者の大幅な賃上げを求め、春闘に取り組んでいる「非正規春闘実行委員会」が、2024年春闘の中間報告をまとめた。一定の成果もあったが、低額やゼロ回答も目立った。「満額回答」「過去最大の賃上げ」といった報告が相次ぐ正社員の春闘とは異なる状況が浮かんだ。【東海林智】

 実行委は、1人で加入できる個人加盟の労働組合などを中心として全国の23労組で構成され、「一律10%以上の賃上げ」などを求めた。23年に続く取り組みで、9日に都内で記者会見を開き、24年の中間結果を公表した。

 それによると、参加組合は計107社に要求を提出し、59社から賃上げの有額回答を得た。一方、48社はゼロ回答だったという。大手スーパー「ベイシア」でアルバイトについて平均5・41%の賃上げ回答があり、組合員の大学生は時給が56円上がった。大手回転ずしチェーン「スシロー」では、組合員のいる店舗で平均10・7%(平均112円)の賃上げがあったほか、生活協同組合や私学の労組でも賃上げが実現したという。

 仙台市のスシロー店舗で働く女性組合員は、1人でストライキを行い賃上げを獲得した経緯を報告した。女性は「組合員は10人足らずだが、私のストに地元を含め全国から応援があり賃上げにつながった。1人でも声を上げ、働きに見合った賃金を要求することが大事だと改めて思った」と話した。同社をはじめ15社で約500人がストライキに参加し、賃上げを求めた。

 一方で、最低賃金(最賃)と同額で働く組合員の要求に応えないなどゼロ回答のケースも多かったという。本の取次会社で最賃と同額の時給で働く出版労連・出版情報関連ユニオンの男性組合員は「仕事の早帰りなどで月収が10万円を切ることもある。物価上昇の中、最賃では暮らせない。会社は非正規の状況に全く無関心だ」と怒りをあらわにした。

出版取次会社が入るビルの前で賃上げを求め、声を上げる労働組合のメンバー=東京都新宿区で2024年5月9日、東海林智撮影

 この男性と実行委のメンバーら約40人は、取次会社の前で抗議活動を行った。参加者たちは「会社を支えている非正規労働者の働きに報いろ」「人間らしい生活ができる賃金に改善しろ」と訴えた。

 実行委が5月1~8日にネット上で実施した非正規労働者へのアンケート(回答者251人)では、72・5%が今年1月以降で「賃金は引き上げられていない」と回答。92・4%が生活が苦しく「賃金を上げてほしい」と答えたという。非正規の賃上げでは、大手流通や飲食の非正規を組織する産業別組合のUAゼンセンで正社員を上回る賃上げを得ている。一方で、アンケートでは、賃上げの波は非正規にまでは及んでいないことの一端を示した。

 実行委メンバーの一人で総合サポートユニオン共同代表の青木耕太郎さんは「非正規春闘に取り組んでいると、『高水準の引き上げ』なんてどこの話なのかと思う。7割以上の非正規労働者の賃金が上がらないのは異常で、今後も粘り強く賃上げに取り組む」と話した。

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