資材を一時保管する神奈川県内のセンコーの物流センター(写真:都築雅人)

建設会社の倒産が止まらない。帝国データバンクによると、2023年の倒産は全国で約1700件。22年比38.8%増で、前年比ではリーマン・ショックに見舞われた08年(17.3%増)を上回った。

背景には人手不足と資材価格の高騰がある。工事の採算が大幅に悪化し、大手ゼネコンの清水建設でさえも24年3月期は上場以来初の営業赤字に転落する見通しだ。

この危機的状況に、2つの2024年問題が追い打ちをかける。

24年4月から、工事現場での時間外労働を上限年720時間以内とする規制が適用となる。人手不足の中、人件費にさらなる増加圧力がかかりそうだ。加えて、資材を運ぶトラックドライバーも時間外労働が年960時間までに制限される。これにより工事の人手と資材の運び手がさらに逼迫し、ただでさえ資材高騰で苦しい建設コストに、人件費増がのしかかる可能性が高い。

工事の人手と資材の運び手は、全国的に大型建設プロジェクトが目白押しの中、ますます逼迫するとの見方は多い。半導体関連では熊本県で台湾積体電路製造(TSMC)の工場建設が進み、北海道でも最先端半導体の国産を目指すラピダスの工事が本格化する。これに25年国際博覧会(大阪・関西万博)、1月の能登半島地震の復興需要が加わる。

しわ寄せは他の案件に及ぶ。「すでに資材不足や人手不足で工期が遅れている案件はある。4月からの規制もあり、より状況は厳しくなるだろう」。ある大手ゼネコン幹部は嘆息する。

建設業界の資材輸送では、拘束時間の長さが課題だ。17年に国土交通省が行った調査では、発着時の荷待ち時間が4時間以上となる割合は、全輸送品目のうち「建築・建設用金属製品」が最多だった。30分以上で見ても、「加工食品」についで2番目に件数が多い。4月以降、ドライバーの1日の拘束時間は「最大15時間」。このうちの多くを荷待ちに費やしていては長距離輸送には対応できない。

重く大きい建設資材の中でも、鉄鋼資材は特に重厚長大なものが多い。輸送には制約が多く、荷積みや荷下ろしにも時間がかかる。鉄鋼メーカーや鉄鋼を扱う商社で構成する日本鉄鋼連盟は、24年以降も鉄鋼の安定供給を担保するため、発着荷主と運送業者を含むサプライチェーン(供給網)全体への呼びかけを開始した。

鉄鋼ユーザーの企業や団体に職員が足を運び、リードタイムの確保や納入時間の緩和などで協力を依頼。担当の加納呼亜業務部原料・物流グループリーダーは、「『行脚』することで効果が出るか不安はあった」と振り返る。だが、呼びかけを通じて一部ユーザーがリードタイムの確保などに取り組み始め、業界団体が先導して動くことの重要性を実感したという。

改善の動きは広がりつつある。清水建設は21年、茨城県に中間物流拠点(ロジセンター)を開設。大都市圏の現場は資材を置く場所が少なく、従来は資材製造元から現場までこまめに運送していたが、新拠点の設立で運送回数と荷待ち時間を大幅に減らした。「現場とドライバーの業務時間の両方を削減したい」と山本宏史上席エンジニアは話す。

物流大手のセンコー(大阪市)は、建設資材を物流拠点で一時保管した後、工程に合わせて現場に運送する仕組みを構築する。ニシオホールディングス傘下で建設機材のレンタルを手掛ける西尾レントオールは、長距離輸送を減少させるために10年単位の長期プロジェクトで拠点再編に取り組む。これまでの商慣行を抜本的に見直すことが求められている。

(日経ビジネス 馬塲貴子)

[日経ビジネス電子版 2024年3月14日の記事を再構成]

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