【台北=石井宏樹】1月の台湾総統選で当選した民主進歩党(民進党)の頼清徳(らいせいとく)氏(64)が20日、総統に就任した。頼氏は就任演説で、中国との関係について「傲慢(ごうまん)にも卑屈にもならず現状を維持する」と話し、2期8年を務めた蔡英文(さいえいぶん)前総統の路線を維持する方針を示した。中国は民進党を独立派と位置づけており、今後も統一圧力をかけ続けるとみられる。

就任式典で手を振る(左から)蔡英文前総統、頼清徳新総統、蕭美琴新副総統=20日、台北の総統府前(共同)

 頼氏は演説で、中国を名指しして「中華民国(台湾の正式名称)が存在する事実を直視してほしい」と求めた。さらに「台湾への言論での威嚇や武力による挑発を止めるように求める」と訴えた。有権者に向けては「中国の台湾併合のたくらみは消えることはない」と警戒を促した。  「一つの中国」原則を口頭で認めたとされ、中国が対話の前提とする「1992年コンセンサス(共通認識)」には触れなかった。

◆与党は第2党に転落、厳しい政権運営になりそう

 中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官は20日、演説について「台湾独立の立場を堅持しており、分離主義の誤りを大々的に宣伝し、中台の対立を扇動している」と批判する談話を発表した。中国はこれまでも頼氏を、台湾独立派の「トラブルメーカー」と非難してきた。  総統選と同時に行われた立法委員(国会議員)選挙で与党・民進党は第2党に転落し、立法院で過半数を握れなかった。新政権では、政党間で意見が割れる重要課題や軍事関連の法案・予算を巡って野党との交渉が求められ、厳しい政権運営が予想される。  台北市での就任式では、副総統の蕭美琴(しょうびきん)氏(52)も就任宣誓した。総統府前広場で開かれた就任祝賀行事には、パラグアイなど国交のある友好国をはじめ、世界51の国・地域から500人超の代表団が参加。日本は超党派の日華議員懇談会(古屋圭司会長)から、過去最大規模となる31人の国会議員が出席した。 

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