中国では不動産不況が長引く=ロイター

不動産不況に直面する中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が、民間住宅在庫の買い取りに乗り出す。背景には土地売却収入に頼る地方政府の財政難がある。一部の地方では傘下の投資会社「融資平台」が富裕層などから調達した資金を返せなくなるなど、ほころびを隠せなくなっている。

東南アジアとの国境地帯に位置する中国雲南省。省都・昆明市の融資平台「昆明交投城市投資発展集団」が資金繰りに苦しんでいる。主に個人富裕層が投資するファンド(信託商品)から約2億6000万元(約56億円)の借り入れをしていたが、期日までに元本を返済できなかった。

同社は旧市街地の再開発などを手掛ける。2020年以降の不動産不況を受け、資金繰りが急激に悪化した。入手できる最新の財務諸表では、21年末時点の現預金2億8000万元に対し、1年以内に返済期限を迎える債務は10億9500万元にのぼる。

融資平台は地方政府の別動隊としてインフラ投資を担い、巨額の債務を積み上げてきた。国際通貨基金(IMF)によれば融資平台の債務は23年末で60兆元を超え、地方政府の債務を上回る。

資金調達手段として公募社債や銀行融資に加え、信託商品などシャドーバンク(影の銀行)からの融資を多用してきた。地方政府と関係が深い融資平台には「暗黙の政府保証」があるとみて、富裕層や企業もカネを出した経緯がある。

情報会社DZHによると、信託商品や私募の投資商品で5月までに償還が確認できていない事例は196件に達した。うち半数の99件が23年以降に集中する。融資平台からの返済が滞ったために償還できなかったとみられる。

信託商品の購入者は一部の個人富裕層や企業が中心だ。情報開示は少なく、返済遅延額も1件当たり数億元にとどまる。信託商品への返済が水面下で後回しにされやすいゆえんだ。

規模が小さいとはいえ、シャドーバンクに対する「隠れ債務不履行」は機関投資家が主な購入者である社債の借り換えに影響を及ぼしている。昆明市の融資平台は24年初め、社債発行の断念に追い込まれていた。

公募社債市場において、融資平台の実質的な債務不履行は起きていないとされる。仮に不履行が表面化すれば「暗黙の保証」の前提が崩壊し、マネー流出と連鎖破綻を招きかねない。

地方政府の支援なしに融資平台が立ちゆかないのは明らかだ。23年からは地方政府が地方債を発行し、融資平台の債務との置き換えも始めた。もっとも地方に財政余力がなければ、融資平台を支援し続けることは難しい。習指導部が17日に打ち出した住宅在庫の買い取り策は、地方政府の収入基盤を立て直す狙いが透けて見える。

「1部屋当たり70平方メートル以内、買い取り規模は1万平方メートル」「買い入れた物件は公営の賃貸住宅とする」。浙江省杭州市の西部、臨安区はこのような公告を出した。

住宅在庫の買い取りにあたり、中国人民銀行(中央銀行)は銀行に3000億元の資金枠を設けた。各行はこれを原資に、買い取りの実行部隊となる国有企業に貸し出しを行う。人民銀は5000億元の貸し出しを誘発すると見込む。

地方政府の収入は不動産会社への土地売却が2〜3割を占める。依存度がより高い地方政府もある。民間の住宅在庫が減れば土地売却が盛り返し、融資平台を支援する地方の財政余力が高まる――。このような見立てが習指導部にはある。

今回の措置で不動産問題が解決すると見る向きは少ない。在庫の多さに比べて買い取り規模が小さすぎるからだ。中銀国際証券は在庫を適正水準まで減らすには6兆元の投入が必要と試算する。

融資平台の「隠れ債務不履行」は、問題先送りの限界を示唆する。在庫買い取りは不動産市況の改善を通じて地方政府に恩恵をもたらすとみられるが、時間稼ぎにすぎない。抜本策を打ち出せなければ、習指導部に対する市場の評価は厳しくなるばかりだ。

(張勇祥)

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