【バンコク=藤川大樹】ミャンマー西部ラカイン州で国軍と戦う少数民族ラカイン族の武装勢力「アラカン軍(AA)」のトゥワンムラッナイン司令官が東京新聞のオンライン取材に応じた。ともに仏教徒中心の国軍とAAが、同州でイスラム教徒少数民族ロヒンギャを「弾圧している」と国連機関などが懸念を強めている。トゥワンムラッナイン氏はそれを否定し、国軍側がラカイン族とロヒンギャを「宗教的に分裂させようとしている」と強調した。

◆「政治的だけでなく、宗教的にも分裂させようとしている」

5月28日、オンライン取材に応じるアラカン軍のトゥワンムラッナイン司令官(藤川大樹撮影)

 2009年に結成されたAAは国内有数規模の武装勢力の一つで、トゥワンムラッナイン氏は「4万人近い兵士がいる」と説明している。同氏が海外メディアのインタビューに応じるのは異例だ。  トゥワンムラッナイン氏は「国軍は劣勢になると、イスラム教徒を徴兵した。AAとイスラム教徒の民兵を対立させた方が、国軍が生き延びられると考えたからだ。政治的だけでなく、宗教的にも分裂させようとしている」と主張した。

◆「国軍がイスラム過激派にも武器供与」

 AAは、バングラデシュに隣接し、ロヒンギャが多く暮らすラカイン州北部のブティダウン、マウンドー両郡区で攻勢を強めており、5月18日にブティダウンを掌握したと発表した。

5月4日、ミャンマー西部ラカイン州で、AAに降伏した国軍部隊。国軍に徴兵されたロヒンギャも含まれていたという(AA提供)

 同氏は「ブティダウン、マウンドー両郡区をこれほど早く攻める計画はなかったが、国軍が『アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)』などのイスラム過激派にも武器を供与したので、作戦の実施を早めた」と明かした。AAはこれまでにラカイン州北部を中心に10以上の街を掌握した。

◆「私たちはやっていない」

 一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ブティダウンの街の大部分が焼失し、数万人の住民が避難を余儀なくされたと指摘。「AAと国軍の双方によるロヒンギャへの攻撃を記録した。空爆や、丸腰で逃げる村人への銃撃、斬首、失踪、民家の焼き打ちの報告を受けている」と糾弾している。  これに対しトゥワンムラッナイン氏は「私たちはやっていない」と否定した。故郷を追われたロヒンギャの中には「土地問題や政治的な動機からラカイン族を憎んでいる者もおり、AAの行動を自説の補強のために都合よく解釈する」と釈明。「ブティダウンは(宗教的に)繊細な地域なので、事前に住民に軍事作戦を伝え、イスラム教徒行政官の助けを借りて避難を促した。彼らはそれを強制移住と決めつけ、まるで戦争犯罪をしているかのように描いた」と持論を展開した。 

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