米国では半数以上の中絶で中絶薬が使用されている=ロイター

【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は13日、経口妊娠中絶薬「ミフェプリストン」の流通を認める判断を下した。判事9人の全会一致で、流通規制を求めた原告の中絶反対派医師らには訴えを起こす権利がないとした。中絶問題は11月の大統領選の大きな争点の一つだ。

中絶の権利擁護派には朗報となる。ただ、最高裁は中絶薬の是非そのものには踏み込まなかったため、新たな訴訟が起きる可能性がある。

ミフェプリストンは米国で中絶に使われる2種類の薬の1つ。米食品医薬品局(FDA)が2000年に承認した。米国では中絶を望む人の半数以上が中絶薬を使用している。

最高裁は22年に中絶の権利を否定する判断を下し、保守州の多くが中絶を禁止したり厳しく規制したりした。中絶薬は禁止州にも郵送できることなどから、最高裁の判断後に需要が増した。

中絶に反対する医師らが22年、ミフェプリストンは安全でないとしてFDAによる承認を無効にするよう求めて提訴した。下級審が流通を差し止めたり、入手を困難にしたりする判決を出し、政権側がこれを不服として最高裁に上訴していた。

最高裁は、原告の医師らは実際に中絶薬を処方したり使用したりしておらず、中絶薬の流通による具体的な損害を被っていないため訴える権利がないとした。

ハリス副大統領は大統領選の選対を通して声明を発表し「この判断は、ドナルド・トランプのせいで何百万人もの女性が残酷な中絶禁止の下にあるという事実や、中絶薬を使う中絶への脅威を変えるものではない」と主張。大統領選で再対決するトランプ前大統領を攻撃した。

最高裁は西部アイダホ州の中絶禁止法が病院に緊急医療の提供を義務付けた連邦法に違反するかどうかを巡る訴訟も審理しており、近く判断を下す見通しだ。

【関連記事】

  • ・米アリゾナ州、中絶全面禁止法廃止へ 大統領選の激戦地
  • ・米最高裁、緊急時の中絶巡り審理 判事の姿勢割れる
  • ・「中絶禁止はトランプのせい」 ハリス氏、激戦州で演説

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。