ロシア極東アムール州で握手する北朝鮮の金正恩総書記㊨とロシアのプーチン大統領(2023年9月)=朝鮮中央通信・ロイター

【ソウル=甲原潤之介】ロシアのプーチン大統領は18日から北朝鮮を訪問する。ウクライナ侵略が長期化し欧米諸国からの制裁が強まる中、外交面での孤立を回避し軍事面での協力を求める。北朝鮮も武器提供の見返りに衛星に関する技術支援を受けるとみられ、ロ朝の相互依存関係が一段と深まる。

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プーチン氏の訪朝は金正恩(キム・ジョンウン)総書記の招待を受けたもので、2000年以来24年ぶりとなる。プーチン氏は金正恩氏と平壌で首脳会談を開催し、安全保障や貿易など経済連携について協議する見通しだ。会談後に採択するとみられる共同声明などが焦点となる。

プーチン氏は00年7月の前回訪朝で金正恩氏の父親の金正日総書記(当時)と会談した。ロシアは主要8カ国(G8)のメンバーで、プーチン氏は直後に開催された主要国首脳会議(沖縄サミット)にも出席した。

だがロシアは14年にウクライナのクリミア半島を一方的に併合し、G8から除外された。22年2月にウクライナ侵略を開始し、米国を筆頭にした欧米諸国との対立が決定的となった。

西側諸国による対ロ制裁が強まり、ロシアは制裁に加わらない「友好国」との関係を深めようとしている。欧米がロシア産原油への制裁を科したため、中国やインドへの資源輸出に切り替えた。

5月に通算5期目に入ったプーチン氏は、初の外遊先に中国を選んだ。習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談で「外交や安全保障での対話を深め、国際的な協調を進める」と強調した。

国際的な孤立を深めるロシアにとって、北朝鮮の重要性も高まっている。ペスコフ大統領報道官は13日「北朝鮮は我々にとって友好的な国だ。2国間関係の発展の可能性は非常に深い」と記者団に述べた。

プーチン氏は23年9月、金正恩氏とロシア極東で首脳会談を開き、政治や経済、軍事について意見を交換した。会談後の国営テレビのインタビューで軍事協力に一定の制約があるとしつつ「展望がある」と期待を示した。

ロシアはウクライナ東・南部を中心に制圧地域を拡大しており、長期戦の構えを崩していない。北朝鮮がロシアに弾薬などの武器を提供しウクライナ侵略を側面支援していると米国や韓国は分析する。

韓国の情報機関、国家情報院は23年11月、北朝鮮の軍事偵察衛星の発射にロシアが技術支援をしたと説明した。

プーチン氏は北朝鮮訪問に続いて友好関係にあるベトナムも訪問する。対ロ制裁から距離を置き、中国やインド、ロシアが参加するBRICSへの新規加盟にも関心を示すベトナムと外交関係を深め、西側諸国に対抗するための陣営作りを急ぐ。

今回のプーチン氏の訪朝は13〜15日までイタリアで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)や15、16両日にスイスでウクライナ提唱の和平案を議論した「世界平和サミット」の直後となった。

G7サミットではロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援で合意しており、西側諸国を威嚇する狙いもあるとみられる。

北朝鮮にとっても、ロシアの接近は国際社会での孤立を打開する好機になる。

北朝鮮が06年に初の核実験を断行して以降、国連安全保障理事会は北朝鮮に制裁を科し続けている。各国の制裁履行状況を調査する「専門家パネル」は24年4月、ロシアの拒否権によって活動できなくなった。常任理事国のロシアが国際社会の制裁網に穴を開けた。

北朝鮮は敵対する韓国が米国や日本と安保協力を深める状況で、軍事力を強化する必要に迫られている。同盟関係にある中国は制裁違反にあたる表だった軍事協力を自制する。孤立状態が続いた北朝鮮にとってロシアの存在は貴重といえる。

韓国政府内には北朝鮮がロシアと軍事協力の「制度化」をめざしているとの見方も浮上する。北朝鮮は旧ソ連と60年代から同盟関係にあり、有事の際に自動的に双方の軍が介入する条約を結んでいた。ソ連が韓国と国交を結んだのを機に関係が悪化し、96年に失効した。

北朝鮮にとってはウクライナでの戦争が終わればロシアが北朝鮮から砲弾を調達する必要がなくなり、捨てられる懸念がある。軍事同盟に近い条約を再び整備し、戦争が終わる前に強固な関係をつくりあげようとしているとの推測がある。

韓国はこの動きを警戒する。趙兌烈(チョ・テヨル)外相は16日のテレビ出演で「合意の結果によっては必要な措置を取る」とロシアに事前に警告したと明らかにした。

戦争が終われば北朝鮮との軍事協力より韓国との経済協力がロシアの国益に資すると訴え、北朝鮮に過度に接近しないよう働きかける。

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