【ソウル=上野実輝彦】ロシアのプーチン大統領が18日にも北朝鮮を訪問する。19日まで滞在し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と会談。両氏は政治や経済、安全保障面などでの協力強化を盛り込んだ「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名し、関係の深化を内外に示す見通しだ。  プーチン氏の訪朝は2000年7月以来、約24年ぶり。新型コロナウイルス禍以降、初めて北朝鮮を訪れる外国首脳となる。

プーチン大統領(2017年撮影)

 ロイター通信によると、ロシアのウシャコフ大統領補佐官は、首脳会談について「国際政治や経済など、両国間で近年起きたことを踏まえる。安保も考慮する」と指摘。パートナーシップ条約が締結されれば、1961年の友好協力相互援助条約や2000年の友好善隣協力条約に代わる、両国の新たな基本文書になるとの認識を示した。訪朝団にはベロウソフ国防相やラブロフ外相らも含まれるという。  朝鮮労働党機関紙・労働新聞は18日付1面で、プーチン氏の寄稿文を掲載。プーチン氏は、ウクライナでの「特殊軍事作戦」に対する北朝鮮の支持を評価した上で、西側諸国の統制を受けない相互決済システムの発展や平等で不可分な安全構造の構築、人道的協力の発展などで関係強化を目指す考えを表明した。こうした内容を新条約に盛り込むとみられる。  ウクライナ侵攻が長期化するロシアと、核・ミサイルにより国連安全保障理事会の制裁を受ける北朝鮮は、兵器取引や軍事技術支援を通じて急速に接近しており、今回の首脳会談でも主要議題になる見込みだ。    ◇

◆国連制裁からの「離反」も示唆、新たなパートナー関係へ

 ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は19日に会談し、両国の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする見通しだ。ロシアのウクライナ侵攻に端を発した武器取引や北朝鮮が欲する核関連技術などの軍事協力がどこまで進むか、国際社会が注視している。(ソウル・木下大資)

北朝鮮の国旗(資料写真)

 「西側の統制を受けない(ロ朝の)決済システムを発展させ、一方的で非合法な制限措置に共同で反対する」。プーチン氏は、北朝鮮メディアが18日に伝えた寄稿文でこう表明し、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する国連安全保障理事会の制裁から「離反」する方針を示唆した。ロシア自身もウクライナ侵攻を巡る制裁で主要銀行が国際的な決済網から排除されているが、より露骨に北朝鮮と連携して国際社会の制裁に対抗していく意志を示した形だ。  ロシアの現地報道によると、プーチン氏には外相、国防相に加え、エネルギー担当副首相、国営宇宙開発企業ロスコスモスの社長らが同行。協力分野には、北朝鮮が保有を目指す軍事偵察衛星に関する技術支援も含まれる可能性が高い。北朝鮮は先月27日に偵察衛星打ち上げに失敗したが、韓国の申源湜(シンウォンシク)国防相は米メディアが17日に報じたインタビューで「ロシアが最新エンジン技術を提供した」との見方を示している。

◆韓国は「一線を越えない」よう強く要求

 最大の焦点は両国の軍事協力が同盟レベルまで進むかだ。  北朝鮮が旧ソ連と1961年に結んだ友好協力相互援助条約は、一方の国が他国の武力侵攻を受ける場合、自動的に介入する条項があったが、ソ連崩壊後に失効。ロシアと2000年に結んだ友好善隣協力条約に同様の条項はなくなった。  韓国政府は、今回新たに締結予定の「包括的戦略パートナーシップ条約」によって、ロ朝の同盟関係が復活することを警戒する。  張虎鎮(チャンホジン)国家安保室長や趙兌烈(チョテヨル)外相は最近のテレビ出演で、ロシアに対し、北朝鮮への核関連技術の移転など「一線を越えない」ことを強く求め、会談の結果によっては「必要な対応措置を取る」と、ロシアに警告していると明かした。  一方、プーチン氏は今月5日、海外メディアに「韓国がウクライナに兵器を直接供給していないことに感謝する」と述べるなど、対韓関係に配慮する姿勢も見せている。  韓国の統一研究院・趙漢凡(チョハンボム)研究委員は「ロシアはウクライナの戦況が悪い今は北朝鮮を活用するが、戦争後を見据えれば、韓国との協力が必要だ。北朝鮮との関係強化を派手に見せかけても、実質的な発展はあまりないのではないか」と分析する。 

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