ロシアのプーチン大統領が19日に北朝鮮を訪れて金正恩総書記と会談し、包括的戦略パートナーシップ条約に署名した。両国関係を「同盟」に近い水準に引き上げる合意文書といえる。東アジアで高まるロ朝蜜月の脅威に、国際社会は結束して備えを急ぐべきだ。
プーチン氏の訪朝は24年ぶりのことで、両国の首脳会談は金正恩氏がロシア極東を訪れた2023年9月に続く開催だった。
ロ朝関係の法的基盤となる新条約は政治や経済、安全保障、文化など幅広い分野での協力拡大をうたう。会談後に金正恩氏が「同盟関係という高い水準に引き上げられた」と発言すると、プーチン氏も「真のブレークスルー(現状突破)の文書だ」と応じた。
国際法や国連決議を軽視する2人の自画自賛であり、強い懸念を覚えざるをえない。日米韓との対立で孤立する北朝鮮とウクライナ侵略で弾薬不足のロシアが東アジアで脅威を演出し、誇示した。
新条約にはロ朝のいずれかが武力侵攻を受けて戦争状態におかれた場合、「もう一方が遅滞なく軍事的およびその他のあらゆる援助をする」との内容を盛り込んだ。
有事の相互軍事支援は、失効済みの旧ソ連と北朝鮮との条約に規定があった。この条項の復活に警戒を強めなければならない。
プーチン氏は「軍事技術協力の発展を排除しない」とも述べた。北朝鮮に核・ミサイル開発の技術を供与する可能性を示唆しており、断じて容認できない。
ロシアと事実上の同盟関係になった北朝鮮が、挑発や脅しをエスカレートさせる恐れもある。日米韓は共同演習や情報共有を通じ、北朝鮮への抑止力を強化することが急務となろう。
北朝鮮の後ろ盾となってきた中国はロ朝の新条約に不快感を強めているとみられる。18日には韓国と次官級の「外交安保対話」を開き、朝鮮半島問題を協議した。
ロシアは北朝鮮からの弾薬の調達を増やし、ウクライナ侵略で優位を固めようとするだろう。北朝鮮との武器取引はいうまでもなく国連決議違反だ。国際社会は監視を強化し阻止する必要がある。
プーチン氏は新条約で、米主導の既存の国際秩序を壊す外交戦略に北朝鮮を組み込んだ。イランや中国などとユーラシアを横断する反米の枢軸を形成する。ウクライナだけでなく朝鮮半島もその最前線となる危機を想定すべきだ。
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