【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェード判決」を覆してから2年となる24日、バイデン大統領は声明を発表し「ドナルド・トランプこそ、この悪夢の責任を負う唯一の人物だ」とトランプ前大統領を非難した。
中絶問題は民主党のバイデン氏と共和党のトランプ氏が再対決する11月の大統領選の争点の一つとなっている。
最高裁はトランプ氏が在任中に保守派3人を指名したことで保守に大きく傾斜した。これが中絶の権利を否定する判決につながったとされる。判決を受けて保守州の多くが中絶を禁止したり厳しく規制したりした。
バイデン氏は選対を通した声明で「機会があれば(トランプ氏が)全米で中絶を禁止するのは間違いない」とし「カマラ(ハリス副大統領)と私はあなた方の(中絶の)自由を取り戻すために必死で闘っている」と強調した。
ハリス氏は同日、東部メリーランド州で演説し「トランプの中絶禁止」によって女性が流産後の医療を拒否されたり、不妊治療も規制する動きが出たりしていると指摘。「トランプの2期目はさらにひどいことになる」と訴えた。ハリス氏は大統領選の激戦州である西部アリゾナ州も訪れる。
ジル・バイデン大統領夫人も23日に激戦州のペンシルベニア州を遊説し、中絶の権利擁護をアピールした。
バイデン氏はトランプ氏に激戦州の支持率で後れを取る。最高裁判断から2年を機に、女性や若者の関心が高い中絶問題で攻勢をかける構えだ。
トランプ氏は最高裁の判決を成果として中絶に反対する保守派の支持固めを図る一方、中絶規制は各州が決めることだとして全米一律の禁止は支持しない立場を表明している。無党派の取り込みが課題の大統領選に向けて現実路線を取っている。
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