インタビューに応じる東京大学の小泉悠准教授=12日、東京都目黒区の東京大学先端科学技術研究センターで
ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、6月中旬に約100の国・機関が参加する「世界平和サミット」がスイスで開かれたものの、ロシアは招待されず、中国は欠席、インドなど主要新興国も共同声明への署名を見送った。ロシアの軍事に詳しい小泉悠・東大先端科学技術研究センター准教授(42)は「戦争は当面続く」と見通した上で「即時停戦には反対だ」と言い切った。◆「軍事支援」国民的議論があってもいい
小泉氏は「ロシアのプーチン政権は、(ウクライナが)占領地を差し出せば戦争をやめる、とは約束していない」と指摘。「ロシアの要求はウクライナの政権すげ替えや非軍事化であり、土地を渡せば停戦が可能との議論は第三者の勝手な思い込みだ」と楽観論を否定した。ロシアの侵攻から2年となる2024年2月24日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で、献花するウクライナのゼレンスキー大統領(中央)、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長(右から2人目)ら=ウクライナ大統領府のサイトより
また、即時停戦に反対する理由については「ロシアの占領地には人が住んでおり、若者を徴兵や志願強制で軍に入隊させれば、ウクライナ人がウクライナ人を相手に戦わされる事態になる」と危ぶむ。ロシアが勝手な言い分で始めた侵攻であり「ロシアがウクライナの主権の奪取や制限を諦めるような条件で停戦することが大事だ」と指摘した。 日本にできることとして、手厚い民生支援の継続に加え、「市民の命を守る人道支援として、防空システムだけでも供与できないか」と提案した。国際紛争の当事国への武器輸出を禁じた日本政府の原則を「簡単に変えてはいけないと思う」としつつ「ウクライナの都市では、ロシアのミサイル攻撃で一家全滅ということが頻繁に起きている」と惨状を強調。「ウクライナへの直接の軍事支援について、国民的な議論だけでもしてみてもいいのではないか」と話した。(滝沢学)小泉悠(こいずみ・ゆう) 1982年、千葉県生まれ。外務省専門分析員、未来工学研究所特別研究員などを経て現職。ロシアの軍事政策のほか、人間の認知を標的とした情報戦など安全保障の新領域分野の研究も進める。著書『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)でサントリー学芸賞。ネットでは「ユーリィ・イズムィコ」のペンネームで知られている。
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