香港とシンガポールは富裕層の取り込みを競い合っている

不動産市場の低迷、米国との地政学的摩擦、そして景気刺激策に伴う過剰生産。中国経済の「成長神話」の陰りが見えてきました。日本経済新聞社の英文媒体「Nikkei Asia」で6月に読まれた記事をみると、経済成長期に巨額の財をなした中国の富裕層が次にどう動くかに世界の読者が関心を抱いていることが読み取れます。富裕層の資産を管理する「ファミリーオフィス」に焦点を当てた記事では、シンガポールと香港の競争を取り上げました。

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Singapore loses China's rich to Hong Kong in family office rush

ファミリーオフィスは資産家の一族が保有する金融資産や不動産の運用などを一手に担います。アジアでは、金融都市であるシンガポールと香港が二大拠点です。

6月20日の記事は、シンガポールより簡単にファミリーオフィスを設立できる香港に富裕層が流れていると伝えています。シンガポールでは2023年に発覚した巨額のマネーロンダリング(資金洗浄)事件でファミリーオフィスとの関連が浮上し、金融当局による監視・規制が強化されたためです。

ただし香港も中国当局の干渉が強まっています。中国に資産をもつリスクを遮断したい富裕層は難しい判断を迫られています。

中国人富裕層の海外移住も活発化しています。18日付の記事では、資産が100万ドル(約1億6000万円)以上の中国の富裕層で2023年に1万3800人が国外に移住。24年には1万5000人を超す見通しだと伝えています。主な出国先は、米国、カナダ、シンガポールだといいます。

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China to see biggest millionaire exodus in 2024 as many head to U.S.

ライフ&アーツ 猛暑アジア、涼を求める旅行客

アジア人旅行客はより涼しい旅行先を求めている(写真はKalpana Sunder提供)

プーケットやバリのビーチよりもアラスカ、ノルウェー、カナダ――。旅行業界で「クールケーション」と呼ばれる新たなトレンドが広がっています。今年、南アジアや東南アジアでは記録的猛暑となりました。北米や北欧、あるいは南半球のオーストラリアやアルゼンチンなど、人々は少しでも涼しい旅行先を探しています。

巨大な氷山がみられるグリーンランドや、氷河や氷の洞窟があるアイスランドも、アジア人観光客に人気のクールケーションの場所として知られるようになりました。天体観測やゴーストツアーなど日没後のアクティビティーも人気だといいます。

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Asian travelers seek 'coolcations' to beat heat

オピニオン マレー系優遇で分断、着地点を探れ

マラ工科大学はマレー系などに入学者を限定している=ロイター

マレー人や先住民族の学生に入学を限るマレーシア最大のマラ工科大学に、中華系やインド系医学生を受け入れるべきだという提案が波紋を広げています。専門医不足への対応が目的でしたが、学生らは反対運動を起こしました。ボストン大学社会学部のサリーナ・サレーム客員助教授は、多数派のマレー系住民を優遇する「ブミプトラ(土地の子)政策」が社会的分断を招いていると指摘します。

ただ、複数の民族や宗教にまたがる市民イニシアチブも生まれており、分断された社会にとってほどよい着地点が見いだされる可能性もあると述べています。

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Malaysia has to find its way to a middle ground on racial privilege

国・地域別トップアクセス

@マレーシア 首都近郊に新コンテナ港

マレーシアの首都クアラルンプール近郊に新しいコンテナ港を建設する計画について報じた記事は、同国や隣国シンガポールで注目を集めました。海上輸送の要であるマラッカ海峡に面する立地で、今後増加が見込まれる物流需要の取り込みを図ります。現地の不動産開発会社タンコ・ホールディングスが中国企業と協力して開発します。

@韓国 半導体製造の革新的技術に注目

台湾積体電路製造(TSMC)が半導体装置・材料メーカーと連携し、革新的な先端パッケージング技術を開発しています。研究開発は初期段階であり実用化には数年かかる見通しですが、さらなる半導体の性能向上にはパッケージング技術の重要性が増しています。世界有数の半導体生産国である韓国では、サムスン電子などのライバルであるTSMCの動向が注目されたようです。

@タイ モールG、商業施設をエンタメの核に

タイの商業施設大手ザ・モール・グループが大型商業施設をエンタメの核として整備しようとするニュースはタイの読者を中心に読まれました。2026年の開業を目指す東南アジア最大規模のショッピングモール「バンコク・モール」でも、コンサートを開ける会場を併設します。タイは東南アジアから観光客を呼び込み、買い物だけでは飽き足らない消費者を満足させようとしています。

@インドネシア スターリンク運用で波紋

起業家のイーロン・マスク氏が率いる米スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」の運用がインドネシアで5月に始まりました。政府は通信の改善などを期待していますが、地元の通信会社を代表するインターネットサービスプロバイダー協会は競争激化を懸念し、スターリンクの特別扱いに異論を唱えています。

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