中国で財政悪化に苦しむ地方政府があの手この手で苦境を乗り切ろうとしている。公安当局と連携して税の取り立てを強化するなど強引な手法には批判が強まり、15日から始まる共産党の重要会議「第20期中央委員会第3回全体会議」(3中全会)で、中央と地方の税配分見直しが議題になるとの見方も出ている。(北京・石井宏樹)

◆財源の柱だった「土地使用権の売却収入」が不況で急減

 山西省長治市で税務局と公安局が「警税合成作戦センター」を設立。5月、インターネット上でこう報じられると、「地方財政の立て直しを公安に頼むのか」と批判が相次いだ。

交通違反を取り締まる交通警察。一部の地方都市では罰金が地方政府の重要な財源になっている=6月、北京市(石井宏樹撮影)

 今年に入って雲南省や福建省などでも相次いで同名のセンターが立ち上がった。中国紙「環球時報」の前編集長胡錫進(こしゃくしん)氏は交流サイト(SNS)「微博(ウェイボ)」で「『作戦』とは軍事用語で『敵』に対して使う言葉だ。このような表現は民間企業家の危機感を高めかねない」と、企業経営を萎縮させる危険性を指摘した。  地方政府がこうした「作戦」に打って出るのは、これまで財源の柱だった土地使用権の売却収入が不動産不況で急減しているからだ。  中国では脱税に対する時効がないため、当局が20年以上前の税未納に対して巨額の追加納税を迫るケースも相次ぐ。飲料製造の維維食品飲料は6月、傘下の元子会社が税務当局から過去30年間の未納分の税金計8500万元(約18億円)を納めるよう求められたと発表。広東省のホテルは27年前の税金未納で調査を受けた。財政悪化と関係しているとの見方が浮上し、国家税務局は「20年、30年さかのぼった調査は(国として)組織していない」と釈明に追われた。

◆税だけでなく、「罰金」にも注力してカネ集め

 税収を上げられない地方政府の奥の手が罰金だ。違法収益の没収や交通違反の反則金などを指し、税収に代わる収入として注目されている。  インターネットメディア「澎湃(ほうはい)新聞」のシンクタンクは、主要都市や上海周辺の地方政府予算案を分析し、各地方政府の税収と罰金収入のバランスを報告した。山東省煙台市では5億元(約110億円)の税収に対して、5億2000万元の罰金収入を見込む極端なケースも見つかった。調査した59都市のうち、7割超で罰金収入の増加を見込むほか、罰金の規模が税収の半分近くに達するケースも散見された。  中国国務院は2月、「増収のための罰金や利益目的の罰金を固く防止する」と恣意的な運用を戒める通知を出したが、抜本的な対策は手付かずのままだ。 

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