【ワシントン=浅井俊典】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が9日、ワシントンで11日までの3日間の日程で開幕した。ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続が主要議題で、加盟国が来年の1年間で400億ユーロ(約7兆円)規模の軍事支援をすることで合意する見通し。

◆バイデン氏「プーチンを止められる」

NATO創設75年を記念する式典で演説するストルテンベルグ事務総長 ©NATO

 初日はNATO創設75年を記念する式典が開かれた。ストルテンベルグ事務総長は演説で「ロシアのウクライナに対する戦争はこの数世代で最大の安全保障上の危機だ。ロシアが勝てば多大な犠牲とリスクが生じる。それを許すわけにはいかない」と述べた。  バイデン米大統領は「NATOは歴史上かつてないほど強力だ。われわれの全面的な支援を受けるウクライナは、プーチン(ロシア大統領)を止められる」と強調。ウクライナの防空能力を強化するため、ドイツやオランダなどと共同で防空システム5基を追加供与することも表明した。  10日には、加盟32カ国による会議があり、ウクライナの将来的なNATO加盟の方針を再確認し、軍事や財政面での長期的な支援を表明する見通し。最終日の11日には、日本などインド太平洋のパートナー国との協力を確認する。

◆「撤退」取りざたされるバイデン氏、力強く演説

 81歳のバイデン氏には、民主党内から秋の大統領選からの撤退論が出ており、ホワイトハウスは会議を通じて指導力を発揮することで収束させたい考え。この日の演説は力強かったものの、11日に予定されている記者会見などのパフォーマンスによっては撤退論がさらに強まる可能性がある。  また、大統領選で返り咲きを狙うトランプ前大統領は在任中、NATOを軽視し、ウクライナ支援にも消極的とされることから、加盟国からは懸念の声が上がっている。  9日にワシントンに到着したウクライナのゼレンスキー大統領は「11月(の大統領選)を待つのではなく、強い決断をするために一歩を踏み出すときだ」と述べ、ロシア軍に対抗するための速やかな対応を求めた。 

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