韓国中部に位置する人口64万人都市の全州(チョンジュ)は、豊かな自然と食材に恵まれ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「食文化創造都市」にも選ばれた「美食の都」だ。ソウルから高速鉄道で約2時間。日帰りで、韓国の多様な魅力を感じられるスポットとして、日本からの観光客にも人気を呼びそうだ。(全州で、芳賀美幸、写真も)

エイの刺し身を熟成させた「ホンオフェ」。豚肉とキムチと一緒に食べる

◆気絶寸前の臭いメニューも!? マッコリにたくさんのおかず

 きれいな水が豊富で米作りに適した全州は、伝統酒マッコリの名店が軒を連ねる。マッコリを注文すると、おかずがたくさんついてくるのが全州流だ。  専門店が集中する「マッコリタウン」に本店を構える「イェッチョンマッコリ」では、10品以上の料理が出てくる。豚肉とキムチを煮込んだキムチチムや、豚足、チヂミなど、お酒がすすむ料理がテーブルいっぱいに並ぶ。  中でも「ホンオフェ」は、エイの一種であるガンギエイの刺し身を熟成させた料理で、日本ではなかなか味わう機会のない珍味だ。本場は西南部の港町・木浦(モッポ)で、強烈なアンモニア臭が特徴。発酵学者の小泉武夫さんも初めて食べた時に気絶寸前に陥ったという。豚肉、キムチと一緒にいただく。好き嫌いが分かれそうだが、フリーライターの児玉由紀さん(52)は「意外といける。お酒好きは喜びそう」と味わっていた。

◆同じ料理の店が一カ所にたくさん…そのワケは?

「自然素材にこだわったマッコリを味わってほしい」と話すイェッチョンマッコリのチェ・インドク代表

 マッコリタウンに限らず、カルビやサムギョプサル、ユッケなど、同じ料理を出す店が一帯に集中している光景は、韓国ならではといえるかもしれない。  「店同士で切磋琢磨(せっさたくま)して味を高め合い、いざという時には助け合うことができる」。日本人観光客の通訳やガイドを20年以上続けるソン・ソンミさん(48)が解説する。でも、競争相手が多いところで、あえて店を営む理由は何なのだろうか。  「イェッチョンマッコリ」のチェ・インドク代表は「たくさんの店があれば、より多くのお客さんが来てくれる。他のお店を訪れた人が、自分の店に来てくれるので、店にとってもいい」と話す。

全州を代表する郷土料理で、特産の大豆もやしなどを使ったビビンバ

 豊富な食材でつくるビビンバも、全州を代表する郷土料理だ。1973年から営業する老舗「古宮」では、全州特産の大豆もやしのほか、黄に色付けされた緑豆こんにゃく、うずまき模様のナツメ、キキョウ、クリ、カボチャなどが、ご飯の上に鮮やかに並ぶ。おいしく食べるこつは、ご飯の一粒一粒に色がつくまでよく混ぜることだという。

◆グルメだけじゃない!街歩きにも魅力

伝統の韓式家屋が並ぶ「韓屋村」。韓服をレンタルして、街歩きを楽しむ若者らでにぎわう

 グルメ以外に、街歩きも楽しめる。韓国式の伝統家屋700軒が立ち並ぶ「韓屋村(ハノクマウル)」は近年、カフェなどの開業が相次ぐ。華やかな韓服を着た若者たちが、重厚な街並みを背景に、撮影を楽しむ姿が目立つ。  全州から車で30分ほどの完州(ワンジュ)に足を延ばせば、伝統家屋と自然が調和した美しい景観を眺めて、ゆったりとした時間を楽しめる。世界的K-POPグループ「BTS」が撮影に訪れたこともあり、観光地として注目が集まっている。  ガイドのソンさんは「都会の喧騒(けんそう)を離れて、おいしいものを食べながら、ゆっくり過ごしたい人におすすめ」と話す。(協力・韓国観光公社) 

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