【ソウル=木下大資】10日に実施された韓国総選挙は11日、全300議席が確定し、保守系与党「国民の力」と系列政党が過半数を大きく割り込む108議席にとどまる大敗を喫した。野党勢力による尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追が可能になるライン(200議席)は阻止したものの、尹政権は厳しい国政運営を余儀なくされることになる。

◆「共に民主党」175議席、「国民の力」108議席

 革新系野党「共に民主党」と系列政党が175議席を獲得して圧勝。革新系で比例代表に特化した新党「祖国革新党」は12議席を得て躍進した。

尹錫悦韓国大統領(資料写真)

 投票率は67.0%で、前回2020年の66.2%を上回った。文在寅(ムンジェイン)前政権で法相を務めた曺国(チョグク)氏が3月に尹政権批判を掲げて祖国革新党を結成したことで、尹氏と、共に民主党の李在明(イジェミョン)代表の双方に反感を抱く中道層の投票を促したとの見方がある。

◆韓悳洙首相や政権幹部が一斉に辞意表明

 尹氏は11日、「国民の意思を謙虚に受け止めて国政を刷新する」と表明。韓悳洙(ハンドクス)首相や大統領室の幹部が一斉に辞意を表明した。外交・安保ラインの交代はないが、日韓関係の改善を重視してきた尹氏の求心力低下は避けられず、元徴用工問題を巡る対応などを野党が批判する状況は続きそうだ。与党の顔として選挙を取り仕切った韓東勲(ハンドンフン)非常対策委員長も引責辞任を表明した。

共に民主党の李在明代表(資料写真)

 李氏は、汚職疑惑などで裁判中の身ながら「政権審判」を前面に出し、自身も当選。自らに近い候補を多数当選させたことで、党内基盤を確立した。次期大統領選を視野に、尹政権への攻勢を強めるとみられる。  国民の力の元代表で、尹氏の側近らと対立した末に離党し「改革新党」を立ち上げた李俊錫(イジュンソク)氏は、若い世代が多く居住する京畿道(キョンギド)華城(ファソン)市の選挙区で初当選。同党は比例代表を合わせ3議席を獲得した。  20年の前回総選挙は、文政権の新型コロナウイルス対策が評価され、当時与党だった共に民主党が180議席を得る圧勝を収めた。22年に尹政権が発足して与党となった国民の力は、国会を停滞させる巨大野党の審判を訴えたが、結果的に政権与党としては空前の大敗となった。   ◇  ◇

◆女性の当選者60人、全体の20%

 【ソウル=上野実輝彦】11日に議席が確定した韓国総選挙では、小選挙区と比例を合わせた女性の当選者が60人、小選挙区だけでも36人でいずれも過去最多となった。ただ国会議員全体に占める女性割合は20%で、日本の衆院の9.7%(2022年)よりは高いものの依然として低水準だ。  当選者全体を年代別にみると、40代以下は前回から7人少ない44人で、20代は1人もいなかった。50代が最も多い150人で、60代は前回より30人以上増えて100人に。70代以上も6人おり、前回よりやや高齢化が進んだ。  韓国メディアによると、小選挙区当選者の平均年齢は56.3歳。21年衆院選の当選者の平均年齢55.5歳より少し高かった。 

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