バイデン米大統領=2022年12月(吉田通夫撮影)

 バイデン米大統領が大統領選からの撤退に追い込まれた。きっかけとなった6月の討論会での失態は、ただ一度のミスにとどまらなかった。おりのようにたまっていた高齢不安をついに払拭できず、民主党を大混乱に陥らせた。4年前に次世代の「橋渡し」を掲げて当選したバイデン氏が再選に固執した責任は重い。

◆ホワイトハウスが行動日程厳密に管理

 加齢に伴う衰えがたびたび指摘されてきたバイデン氏に対して、ホワイトハウスは行動日程を厳密に管理し、老いの兆候が目立たないように努めてきた。  主要行事は午前10時から午後4時の間に行い、臨機応変に対応する必要がある記者会見は年平均11回に制限。カリフォルニア大サンタバーバラ校の調査によると、会見はオバマ元大統領(同20回)や共和党のトランプ前大統領(22回)の約半分にとどまる。

◆強い指導者像を示せず

 オバマ氏やケネディ、クリントン両氏など、米国はさっそうとした若い大統領を生んできた。年齢という物差しだけで比較するのは適切ではない。だがバイデン氏は、前回大統領選でトランプ前大統領を破った実績ばかりに執着し、自らの年齢をしのぐような強い指導者像を国内外に示すことができなかった。  撤退圧力は、大統領選だけでなく上下両院選ともすべて共和党に奪われるとの危機感が民主党幹部や党所属議員を突き動かした結果だ。選挙戦も終盤になっての候補差し替えは、党がそれほどバイデン氏後継の議論を真剣に重ねてこなかった証左でもあり、暗殺未遂事件以降、共和党内の結束を急速に固めるトランプ氏と互角に対峙(たいじ)するのは容易ではない。(ワシントン・浅井俊典) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。