【ワシントン=鈴木龍司】11月の大統領選の出馬を断念した民主党のバイデン大統領は、トランプ前政権の「米国第一主義」を転換し、国際協調路線にかじを切るなど一定の成果を上げたが、就任時に掲げた国内の「分断の解消」に向けた道筋は示せなかった。移民問題や物価高対策でも決め手を欠き、支持率が低迷したまま1期4年での退陣を迫られた。

◆声明で「国家の前進」を誇示したが

 「この3年半、われわれは国家として大きな前進を遂げた」。バイデン氏は21日の声明で、新型コロナウイルス禍からの経済復興や同盟関係強化、気候変動対策などの実績を強調した。

バイデン大統領(2020年2月)

 2021年1月の就任演説では「米国の未来のために結束が必要だ」と繰り返し訴えた。直前には「バイデン氏に選挙を盗まれた」と主張するトランプ前大統領の支持者による議会襲撃事件が発生。政治的な分断や民主主義の危機解消に向け、先頭に立つ決意を示した。

◆支持率低迷、政策はちぐはぐに

 就任当初は欧州や日本などとの同盟関係の強化や環境政策の推進などで手腕を発揮した。ただ、コロナ禍での大規模な経済対策が急激なインフレを招き、支持率が低迷。メキシコ国境からの不法移民が急増し、不満が高まると、トランプ前政権下で推し進めた国境の壁の建設を再開するなど一貫性を欠いた。  ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘でも打開策を見いだせず、トランプ氏から弱腰外交との批判にさらされて守勢に回った。

◆最後は「結束」ともかけ離れ

 自身の撤退の引き金となった6月末の大統領候補のテレビ討論会では、トランプ氏と「史上最悪の大統領だ」とののしり合いを展開。とげとげしい言葉には、政権を維持することへの焦りがにじんだ。  「民主党の皆さん、今こそ団結してトランプを打ち負かすときだ」―。バイデン氏が撤退表明の際に交流サイト(SNS)につづったメッセージは、就任時の演説で全国民に語った「結束」の理想とは懸け離れていた。 

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