ドイツは、先月、空軍の戦闘機などを日本に派遣して航空自衛隊と共同訓練を行い、今月はフリゲート艦などを3年ぶりに日本に寄港させ、海上自衛隊と共同訓練を予定しています。ドイツ軍がインド太平洋地域に空軍と海軍を同時期に派遣するのは初めてです。

ドイツのピストリウス国防相は、先月下旬、首都ベルリンでNHKのインタビューに応じ「安定したインド太平洋地域は、自由な航行、安全な海上輸送につながり、世界にとって極めて重要だ」と述べ、貿易立国のドイツとしてもこの地域の安定を重視していると強調しました。

そして「インド太平洋地域で自国が優位だとふるまう中国が領土を拡大しようとする試みを注意深く見ていかなければならない。どこかの国が特定の範囲の領有権を主張し、そのほかの国が通過できなくなることは認められない」と述べ、中国の海洋進出の動きに懸念を表明しました。

ドイツは中国との貿易が盛んで、メルケル前政権は中国重視の姿勢が目立ちましたが、ピストリウス国防相は「過去の行き過ぎた依存から生じたリスクを大幅に減らす」と述べ、中国への依存から脱却し、外交関係を多角化させる考えを示しました。

そして、インド太平洋地域のパートナーとして日本を特に重視しているとして「日本は安定した民主主義国家で経済大国でもあり力強く発展している。あらゆる分野で協力を発展させ深化させたい」と述べ、来年、陸上自衛隊が離島の防衛を想定してアメリカ海兵隊と定期的に行う共同訓練に、ドイツ陸軍を初めて参加させることも検討していると明らかにしました。

ヨーロッパの安全保障について

ピストリウス国防相はインタビューでロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてヨーロッパの安全保障が転換点を迎えているという認識を示しています。

この中で「ロシアの新たな脅威に直面するなか、われわれは40年前に戻らなければならない。抑止力を持たなければならない」と述べ、国防費や兵力を冷戦期並みに引き上げる必要があると強調しました。

ドイツでは政府の新規の借入をGDP=国内総生産の0.35%までに抑える「債務ブレーキ」と呼ばれるルールがありますが、ピストリウス国防相は「時代遅れに見える」と述べ、国防費の引き上げのために見直すべきだとの考えを示しました。

また、ロシアが2029年にはNATO=北大西洋条約機構を攻撃する準備を整えるというドイツ政府が公表している見方について「ロシアは10年前のクリミア半島の併合のあと、軍の再編に時間がかかった。専門家たちは今回もロシア軍の技術や兵力が近隣国を攻撃できるレベルまで戻るにはそれなりの時間がかかると分析している」と指摘しました。

一方で「プーチン大統領は人々を不安にさせようとしている。国防予算を50%以上増やし、戦争経済に転換した。誰も善意でそんなことはしない」と強調しました。

そして、ロシアは破壊工作や偽情報の拡散などを組み合わせた「ハイブリッド攻撃」をドイツでも激化させているとして「偽情報の拡散やロシア寄りの政党への支援を通じて社会を分裂させようとしている」と述べ、警戒感を示しました。

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