【北京=塩崎健太郎】中国人民銀行(中央銀行)は22日、4月の最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を据え置いたと発表した。米国の利下げ観測が後退して人民元安が進んでおり、人民銀行が追加で利下げするハードルは高くなっている。
人民銀行はLPRを毎月公表し、事実上の政策金利と位置づけている。優良企業に適用する貸出金利の参考となる期間1年は年3.45%だった。8カ月連続で据え置いた。
期間1年を利下げすれば貸出金利が下がり、銀行の利ざやを圧迫する。人民銀行は銀行の収益確保を考慮した可能性がある。
住宅ローン金利の目安となる期間5年超は年3.95%で3月に続いて据え置いた。住宅販売の不振が長引いており、2月に年4.20%から引き下げて住宅ローンの利用を促していた。
人民元安が進んでおり、追加利下げのハードルは高まっている。16日の上海外国為替市場で、人民元は対米ドルで23年11月以来5カ月ぶりの安値を付けた。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は16日に「必要な限り現在の引き締め的な水準を維持する」と発言した。利下げの開始時期が遅れる可能性を示唆した。
中国が景気を下支えするために金融緩和を急げば、資金流出が加速しかねない。資金流出に伴う人民元安は輸入資源の価格を押し上げるなど副作用が大きい。
人民銀行は2月に市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を0.5%引き下げた。市中に回る資金を増やして銀行に積極的な融資を促した。
足元では元安懸念から利下げに踏み切れず、預金準備率の引き下げに頼らざるをえない状況になっている。
資金需要は弱含んでいる。3月の人民元建ての新規貸出額は前年同月比21%減の3兆900億元だった。減少幅は23年7月(49%減)以来の落ち込みだった。個人向けと企業向けいずれの貸し出しも前年同月を下回った。
人民銀行は当面、景気を注視する方針とみられる。
中国国家統計局が16日発表した1〜3月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比5.3%増だった。23年10〜12月の5.2%増から加速した。自動車や電子部品などの生産や投資が堅調だった。
中国国家統計局によると1〜3月の工場の建設などを示す固定資産投資は4.5%増えた。増加率は23年通年(3.0%)を上回るペースだ。一方で民間投資は0.5%増にとどまった。中国政府は国有企業を通じて景気を下支えしている。
不動産市況も低迷している。1〜3月の新築住宅の販売面積は23%減だった。23年通年の8.2%減を上回るペースだ。3月の新築の在庫面積は23.9%増となり、長引く販売不振で在庫が積み上がり、不動産企業は新たな投資に慎重になっている。
3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)によると回答企業の6割超が「需要が不足している」と答えている。景況感の改善が持続するかは見通せず、企業も家計も先行き不安を抱える。
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