グテレス国連事務総長が任命した調査団は、UNRWAの中立性を評価する調査報告をまとめた

【ニューヨーク=佐藤璃子】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の中立性を評価する独立調査団は22日、調査結果を公表した。イスラエルがイスラム組織ハマスやその他の過激派組織にUNRWAの職員が関与していると主張したことに関し「イスラエルは裏付けとなる証拠を示していない」と指摘した。

UNRWAの職員がハマスによるイスラエルへの奇襲に関与した疑いが浮上したことを受け、国連のグテレス事務総長は2月に調査団の立ち上げを発表した。フランスのコロナ元外相が主導し、利害関係国や同機関の職員への聞き取り、現地視察などをもとに最終報告書を作成した。

報告書は「イスラエルは、UNRWAの職員の相当数が『テロ組織』のメンバーであると公に主張したにもかかわらず、いまだに証拠を示していない」と分析した。

UNRWAはほかの国連機関や非政府組織(NGO)よりも政治的に中立的な運用の仕組みがあったという。それにもかかわらず、職員が公に政治的見解を表明したり、施設の一部を政治・軍事的な目的で使用したりするなど、中立性を損なう課題もあると言及。あらゆる分野で改善の余地があると結論づけた。

同職員のハマスへの関与疑惑を受けて、一時は16カ国が計4億5000万ドル(約700億円)にのぼる資金の拠出を凍結した。資金不足によりパレスチナ自治区ガザでの人道危機が深刻化するなか、日本やカナダ、オーストラリアなどが拠出再開を発表した。

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