南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンとベトナムの海上警備機関が9日、マニラ湾近海で初めての共同訓練を行った。相互運用や作戦即応の能力を向上させ、南シナ海で威圧的な行動を強める中国をけん制する狙いだ。本紙はフィリピン沿岸警備隊の巡視船に乗り、訓練を取材した。(フィリピン・マニラ湾で、エレン・クルス通信員、バンコク支局・藤川大樹)

◆訓練海域はマニラ湾のコレヒドール島沖

 フィリピン沿岸警備隊の巡視船「ガブリエラ・シラン」がマニラ港を出発すると、そのすぐ後をベトナム海上警察の巡視船「CSB8002」が続き、マニラ湾に浮かぶコレヒドール島から西約8カイリ(約15キロ)の海域へと向かった。  訓練前夜、フィリピンの首都マニラは大雨に見舞われた。訓練当日の朝もどんよりした雲がマニラ港の上空を覆い、航海中は時折、小雨が降り強風が吹いていた。  ローレンス・ロケ船長は悪天候と高波を受け「演習場所は直前に少し離れた所に変更された」と説明した。2019年にフランスから取得した船はアルミニウム製で軽量のため、高波にあおられ、バランスを崩さないよう手すりにつかまっていなければならないほどだった。

◆南シナ海への派遣「緊張はするが、喜んで赴く」

 フィリピン沿岸警備隊とベトナム海上警察は、捜索救助・消火訓練などを実施。ロケ氏は「われわれの訓練は人道的な側面が強い。海は広く、多くの人たちが沿岸警備隊の支援を必要としているため、こうした活動がさらに行われることを期待している」と語った。  救助訓練はマニラ湾の波立った水面で小型船が火災にあったとの想定で行われ、両国の巡視船が小型船に向かって放水銃を発射。その後、小型のゴムボートを進水させ、救助者を模したダミー人形を救出した。  救助訓練に参加したフィリピン沿岸警備隊のモハマド・マリク・マジッド氏は「東南アジア諸国連合(ASEAN)のパートナーから知識と技術を得る機会に恵まれた。このような訓練がもっと行われることを期待している」と強調。中国との緊張が高まる南シナ海への派遣については「緊張はするが、わが国にとって必要なことなので喜んで赴く」と語った。

フィリピン・マニラ湾で9日、火災が起きた想定で小型船に放水するベトナム海上警察の巡視船(エレン・クルス通信員撮影)

 ガブリエラ・シランという船名は、18世紀のスペイン植民地時代に抵抗運動を指揮した女性革命指導者にちなんで名付けられた。この日は、国内外メディアの30人以上が乗船した。  フィリピンのマルコス大統領は1月、ベトナム・ハノイを訪れた際、両国の海上警備機関の協力関係を強化するとの覚書に署名した。 

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