タイ・バンコクの街並み(資料写真)

 【バンコク=藤川大樹】タイの憲法裁判所は14日、セター首相が内閣改造で犯罪歴のあるピチット氏を閣僚に任命したことを巡り、倫理的な問題があったとしてセター氏と全閣僚の解任を命じた。憲法裁は国軍など保守派の影響力が強く、連立政権を率いるタクシン元首相派の最大与党・タイ貢献党を警戒する保守派の意向が反映された可能性がある。今後新たな首相が選出される見通しだが、政局は混迷を深めている。

◆犯罪歴のある人物の閣僚登用を巡り裁判沙汰に

 憲法裁は判決で「ピチット氏は禁錮刑を受け、弁護士の資格を剝奪されていた。彼が『誠実』で『信頼できる』人物かどうか疑わしいのは明らかだ」と指摘。9人の判事のうち5人が解任を支持した。  セター氏は報道陣に「裁判の結果を尊重する。首相としての職務を誠実に果たし、最善を尽くした」とした上で「一つ悲しいのは、私がモラルを持ち合わせていないため、首相を解任されたと政治史に書かれることだ」と述べた。

◆後任は? タクシン氏次女のペートンタン氏も浮上

 セター氏の失職に伴い、国会で首相指名選が行われる見通し。新首相の候補には、タクシン氏の次女で貢献党党首のペートンタン氏、タイの誇り党党首のアヌティン副首相兼内相、国民国家の力党(PPRP)党首のプラウィット氏らの名前が挙がっている。  セター氏は4月下旬の内閣改造で過去にタクシン氏の弁護人を務めたピチット氏を首相府相に任命した。同氏は2008年、タクシン夫妻が土地取引に関連して汚職防止法違反などに問われた際、裁判所の職員に200万バーツ(約840万円)の賄賂を渡そうとし、同僚2人と禁錮6月の判決を受けている。  前上院議員40人は5月17日、ピチット氏の任命が閣僚の倫理規定を定めた憲法の条文に違反するとして、同氏と任命したセター氏の解任を求める請願書を提出。ピチット氏は同月21日に辞任していた。  憲法裁は今月7日、昨年5月の総選挙(下院選)で第1党となった前進党に対し、王室への中傷や侮辱を禁じる「不敬罪」改正の公約が憲法違反に当たるとして、解党を命じたばかり。 

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