米など 停戦合意に向けた提案を示す

ガザ地区での停戦と人質の解放に向けた協議は15日からイスラエルも参加して行われ、アメリカと仲介国カタール、エジプトの3か国は16日、共同声明を発表して、イスラエルとハマスに合意に向けた提案を示したと明らかにしました。

提案はアメリカが提示し、詳細は明らかにされていませんが、ことし5月末にバイデン大統領が発表した3段階からなる停戦や人質解放を含む提案などに沿っていて、イスラエルとハマスの溝を埋めるものだと主張しています。

そして、関係国の政府高官が合意をまとめることを目指して、エジプトのカイロで来週末までに改めて協議を行うとしています。

イスラエルの首相府は16日「ハマスが人質解放の合意を拒否するのを思いとどまらせるための、アメリカと仲介国の努力に感謝する」などとする声明を発表する一方、ハマスの報道官はロイター通信に対し、アメリカが合意に向け前向きな雰囲気を偽ろうとしているとして慎重な姿勢を示しました。

アメリカのバイデン大統領は記者団に対し「これまでになく合意に近づきつつある。まだ合意に至ってはいないが、祈りながら待とう」と述べました。

戦闘の犠牲者が4万人を超える中、今後の協議で合意が実現できるのかが焦点となります。

ガザ地区 イスラエル軍の攻撃で複数の死者

ガザ地区では16日もイスラエル軍による攻撃があり、地元メディアは、南部ハンユニスで避難民が身を寄せるテントが空爆され、複数の死者が出ていると伝えています。

近くの病院でNHKガザ事務所のカメラマンが撮影した映像には、けが人が次々と病院に運び込まれていく様子のほか、収容された遺体を前に涙を流す男性の姿がうつされていました。

病院の関係者によりますと、この空爆で子ども3人を含む6人が死亡したということです。

空爆に巻き込まれたという男性は、現場はイスラエル側が民間人の避難先だと指定する地区だったとして「イスラエルが安全地帯と呼ぶところで私たちに起きたことは、子どもたちに対する虐殺だ」と怒りをあらわにしていました。

ガザでポリオ感染確認 国連“戦闘停止必要”

ガザ地区の保健当局は16日、ワクチンを接種していない生後10か月の乳児について、25年ぶりに感染を確認したと発表しました。

ポリオは主に乳幼児が感染し、発症すると手足にまひが残ることもある病気です。

ガザ地区でポリオが流行する可能性を7月から警告してきた国連は、16日、64万人以上の子どもたちを対象に、8月末にも大規模なワクチン接種を始める計画を明らかにしました。

グテーレス事務総長は会見で「現状を放置すれば、ガザの子どもたちだけでなく、近隣諸国にも悲惨な影響を及ぼす」と強い危機感を示したうえで、計画の実行には子どもたちや保健チームの安全確保が不可欠だとして「すべての当事者に対して速やかに人道的な戦闘停止を約束するよう求める」と呼びかけました。

WHOによりますと、ワクチンの接種は8月と9月の2段階に分けて行う計画で、それぞれ7日間、戦闘を一時停止することが必要だとしています。

ただ戦闘の停止が実現する見通しは立っておらず、計画が実行に移せるか不透明な情勢です。

米国務長官 17日にイスラエル訪問へ

アメリカ国務省は16日、ブリンケン国務長官がイスラエルを17日に訪問すると発表しました。

ガザ地区での停戦と人質の解放に向け、仲介国のカタールやエジプトとともに示した提案が合意に至るよう、外交的な働きかけを強めることにしています。

また、イランがハマスの最高幹部の殺害を受けイスラエルへの報復の構えを見せる中、ブリンケン長官はすべての関係国などが、地域の緊張を高め、停戦に向けた協議を妨げる行動を避けることの重要性を強調するとしています。

米国防長官“イランや支援勢力の攻撃を監視”

アメリカのオースティン国防長官は16日、イスラエルのガラント国防相と電話で会談し、アメリカ軍はイランやイランが支援する勢力によるイスラエルへの攻撃の動きを、引き続き監視していると伝えました。

アメリカ国防総省によりますと、会談では、不安定化する中東情勢や、イランや、レバノンのシーア派組織ヒズボラなどへの対応について意見を交わしたということです。

オースティン長官は、イスラエルやアメリカに関わる施設などを防衛するために中東地域で十分な態勢をとっていると説明したほか、ガザ地区での停戦や人質の解放に向けた進展についても意見を交わしたとしています。

イラン外相代行 停戦協議で仲介役のカタール首相と会談

ハマスの後ろ盾となっているイランのバゲリ外相代行は16日、SNSに投稿し、停戦に向けた協議で仲介役を務めるカタールのムハンマド首相兼外相と電話で会談したことを明らかにしました。

会談では協議の最新状況や合意に向けた障害について、説明を受けたとしています。

その上で「交渉の場におけるイスラエルとアメリカの欺まんや不誠実さを警告した。イスラエルに武器を提供している共犯者のアメリカは公平な仲介者ではない」として、両国に対する不信感を持ちつつ、協議の行方を注視する姿勢を強調しました。

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