生きた鶏を手にした少年の周りに人だかりができている。中国東北部ハルビンのアムールトラ園を訪れた時のこと。少年が鶏をトラの飼育スペースにつながる金属の筒に押し込むと、向こう側へ滑り落ちた鶏に複数のトラが一斉に飛びかかった。  数秒もたたず1頭が鶏の首に正確にかみ付き「獲物」を仕留めた。不意に出くわした光景に驚くばかりだったが、当の少年や観衆は歓声を上げている。鶏は、来園者向けに売っている餌やり体験用の餌の一種だった。  ハルビンがある黒竜江省は、絶滅危惧種であるアムールトラの生息域だ。冬場には野生のトラが食料を求めて農村部の家畜を襲う事件も起きる。刺激的な餌やり体験は、人間との共生が課題になっているトラの生態を垣間見られる貴重な機会、ということなのかもしれない。  ただ中国人の間でもこの体験には賛否両論あり、北京の知人は「集客のショーのようで気持ちのいいものではない」と否定的だ。日本の環境省によると、日本には餌となる動物の苦痛の軽減を定める基準があり、現在は同じような餌やりの実施例を聞かない、とのことだった。(河北彬光) 

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