韓国の若手インフルエンサーらが7月の約1週間、大阪府東大阪市や宮城県石巻市などを訪れ、日本の町おこしの事例を学んだ。地方過疎が急速に進む韓国で未来を担う若者たちは、国を超えて問題解決の糸口を模索している。(ソウル・上野実輝彦、写真も)

ソウルで8月21日に開かれた、訪日の報告会。韓国の若者が日本の地方都市で聞き取りなどをした

◆ホテルと商店街の連携「日本では民間のボトムアップが重視」

 「ホテルと商店街が協力して知恵を絞り、共通のクーポンなどを発行して地域活性化に取り組むことは、韓国では見られない事例で参考になる」。8月にソウルで開かれた訪日の報告会で、東大阪市布施地区の活動を紹介した旅行クリエーター蘇智炫(ソ・ジヒョン)さん(26)が強調した。  同地区では、シャッターが目立っていた商店街を丸ごとホテルとしてつくり替えた「セカイホテル」が有名だ。多くの若者が宿泊し、従業員としても働いていることに感銘を受けた蘇さん。故郷の光州(クァンジュ)市に思いをはせ「韓国では政府や自治体が主導するが、日本では民間のボトムアップが重視されていた。今後、宿泊施設と商店街の連携に挑戦してみたい」と話した。

◆少子化と地方衰退の「負の連鎖」止まらず

 韓国では教育機関や大企業の多くが首都ソウルに偏在し、地方都市の活力が急激に失われている。働き口を求めて上京した若者が苛烈な競争にさらされ、地元に戻ることもできないまま疲弊して結婚や出産をあきらめるケースも多く、少子化と地方衰退の負の連鎖が止まらない。  そんな韓国の若者たちが今回参加したのは、外務省と日韓文化交流基金が実施する交流プログラム「クールジャパンリポーター」だ。前身の事業も含めた交流プログラムは1989年から始まっており、ホームステイや文化体験などを通じて日本への理解を深め、将来の日韓関係に役立ててもらうのが目的。今年は町おこしに携わる人たちへのインタビューや、東日本大震災の被災地見学なども盛り込まれた。

◆「石ノ森章太郎」をテーマに町づくり 石巻市に感銘

 参加者の1人で大学1年の李俊輝(イ・ジュンフィ)さん(20)は、漫画家の故・石ノ森章太郎さんとのゆかりを生かした石巻市の町づくりに「長所をうまく利用している」と感じた。漫画を題材にした博物館だけにとどまらず、市内全体を一つのテーマでまとめているのが印象的だったという。

ソウルで8月21日に開かれた、訪日の報告会

 李さんの念頭にあるのは、祖母が住む仁川(インチョン)市だ。「ソウルに隣接する自治体ですら過疎化が進む。これからの選挙では、地方都市を大事にする政治家を選びたい」と語った。  日韓文化交流基金で青少年交流を担う清水中一(ちゅういち)部長は、今回のプログラムについて「単なる観光ではなく、韓国人があまり訪れたことのない都市を紹介し、新たな日本の魅力を感じてもらう」ことが狙いの一つだと説明。「地方活性化は日韓共通の課題だ。若者が互いに学び合い、未来に生かしてくれればありがたい」と話した。 

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