【ワシントン=浅井俊典】アメリカ大統領選の民主党候補ハリス副大統領(59)と共和党候補トランプ前大統領(78)は10日、初のテレビ討論会に臨んだ。ハリス氏は「中間層や労働者を引き上げる計画を持っているのは私だけだ」と主張し、人工妊娠中絶の権利や議会襲撃事件を巡ってトランプ氏を追及。トランプ氏は「彼女にはプランがない」などと応酬したが、守勢に立たされた。

◆ハリス氏「女性の権利にトランプが口出しするべきではない」

 討論会は激戦州の東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催。CNNテレビの視聴者調査ではハリス氏が勝ったとする回答は63%、トランプ氏は37%だった。11月5日の投開票まで2カ月を切り、支持率が拮抗(きっこう)する中、ハリス氏は終盤戦へ弾みをつけた。

写真はカマラ・ハリス氏(左、8月撮影)とトランプ氏(7月撮影)

 ハリス氏は、トランプ氏が在任中に最高裁を保守化させ、女性から中絶の権利を奪ったとして「女性の権利にドナルド・トランプが口出しするべきではない」と批判。さらに2021年1月にトランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂を襲撃した事件について「暴徒を扇動した」と非難した。  ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がトランプ氏を応援していると主張し、「独裁者はお世辞で(トランプ氏を)操ることができると確信している」と指摘した。  トランプ氏はバイデン政権の経済政策について「米国人に壊滅的な被害を与えた」と批判。大統領在任中の実績を誇示し「大幅な減税を実施し、素晴らしい経済をつくり上げる」と訴えた。  不法移民対策については「何百万人も米国に流入し、仕事を奪い、街を乗っ取っている」とバイデン政権を批判。ただ、その中で「移民が住民のペットの犬や猫を食べている」との自説を展開。司会者に証拠がないとたしなめられる場面もあった。  一方のハリス氏も「トランプは大恐慌以来、最悪の失業率を残した」など事実とは異なる不正確な発言があり、政策論争は深まらなかった。討論会終了後、ハリス陣営は再討論に意欲を示したが、トランプ氏は明言を避けた。     ◇   ◇

◆討論会「再戦」はある? 両者の終了後のコメントは

 【ワシントン=鈴木龍司】民主党のハリス副大統領(59)の陣営は10日に開かれた米大統領候補によるテレビ討論会終了後、勝利宣言した上で、10月中に再対決を求める姿勢を示した。現時点で次回の討論会の予定はなく、共和党のトランプ前大統領(78)の出方を含め、11月の本選に向けた駆け引きが続きそうだ。   「2回目の討論会の準備はできている。ドナルド・トランプは?」  ハリス陣営は、こう記した声明を発表。トランプ氏の発言を「支離滅裂だった」と指摘し、「国民は秋の投票の選択を知ることができた。10月の2回目の討論会でも知るべきことだ」と再戦を要求した。米メディアの多くが「優勢」と報じたことから、討論会の追加開催によって、さらに勢いを付けたい狙いがあるとみられる。  一方、トランプ陣営は「今夜の討論会は3対1という不名誉な形式にもかかわらず、紛れもない勝利だった」との声明を出し、司会者2人の中立性を疑問視。トランプ氏は10月の討論会の実施について報道陣に「検討する」と述べ、態度を明確にしなかった。  大統領選の討論会は通常、選挙戦の終盤に3回、開催される。今回は6月末にトランプ氏との1回目の討論会に臨んだバイデン大統領(81)が撤退を表明。トランプ氏は当初、ハリス氏に対して9月中に3度の討論会を提案したが、10日以外は合意に至らず、ハリス陣営が求める10月中の討論会の参加に応じるかが注目点となる。 

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