【ソウル=木下大資】北朝鮮メディアは13日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が核弾頭に使われる高濃縮ウランの製造施設を視察したと報じ、多数の遠心分離機が並ぶ施設内の写真も配信した。北朝鮮がウラン濃縮施設を公開するのは初めて。11月に大統領選が迫るアメリカとの交渉を見据え、核兵器の生産能力を誇示する狙いがあるとみられる。視察の場所と日付は明らかにしていない。

◆核兵器用に増産指示

 朝鮮中央通信によると、正恩氏は核兵器研究所と「兵器級核物質生産基地」を訪問し、ウラン濃縮の工程を確認。「生産現場を見るだけで力が出る」と満足感を示し、遠心分離機の増設などを進め、戦術核兵器用の核物質の製造に総力を挙げるよう要求した。  北朝鮮には代表的な核施設として知られる平安北道(ピョンアンプクト)寧辺(ニョンビョン)のほか、複数の秘密核施設があるとされる。今回の視察先は、今年に拡張工事の動きが捉えられたと国際原子力機関(IAEA)が発表した平壌(ピョンヤン)南東の降仙(カンソン)団地との見方がある。  正恩氏は2022年末の党会議で核弾頭の保有量を「幾何級数的に増やす」との方針を示し、最近の演説でも繰り返し言及している。非核化を求めるアメリカと韓国に不可能だと思わせる水準まで核兵器を増産し、アメリカとの間で核軍縮交渉に持ち込む狙いとの見方が強い。  前回のトランプ政権が発足した2017年、北朝鮮は度重なる弾道ミサイル発射や核実験で緊張を高めた後、翌2018年に一転してアメリカとの対話に臨んだ。韓国内では、今回も11月のアメリカ大統領選の前後に、北朝鮮が7回目の核実験へ踏み切るのではないかとの観測が出ている。  韓国統一省の報道官は13日、「韓国と国際社会は北朝鮮の核保有を決して容認しない」と批判。北朝鮮が核実験を強行すれば「前例のない水準の抑止と制裁に直面することになる」とけん制した。  北朝鮮メディアは同日、正恩氏が口径600ミリの超大型放射砲(多連装ロケット砲)の性能試験を視察したとも伝えた。搭載車両の性能を向上させ、日本海の島に命中したという。12日午前に日韓当局が探知した短距離弾道ミサイルを指すとみられる。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。