「タイタニック号」の見学ツアーで2023年、5人が死亡した潜水艇事故で、アメリカ沿岸警備隊の事故調査委員会による審理が始まり、運営会社の元技術幹部が問題点について警告していたと証言しました。
この事故は2023年6月18日、北大西洋の海底に沈む「タイタニック号」の見学ツアーで「オーシャン・ゲート」社が運営する潜水艇「タイタン」が潜水中に水圧で押しつぶされ、5人が死亡したものです。
事故の調査をしている沿岸警備隊の「海洋調査委員会(MBI)」の審理が16日に始まり、オーシャン・ゲートに解雇された元技術幹部、トニー・ニッセン氏が証言しました。
ニッセン氏は、潜水艇の強度の問題点を示すデータを会社の幹部に幾度となく指摘していたにも関わらず、警告が無視されたと証言しました。
また、事故で死亡したCEOのストックトン・ラッシュ氏に乗客が署名する免責事項の書面に「実験的」であることを明記すべきだと進言し、当初、反対されたことを明らかにしました。
審理では、母船「ポーラー・プリンス」号とタイタンとの間の通信内容も公開されました。
その中で、当日の午前10時19分にタイタンから「全て良好」と返答があったものの、28分後の午前10時47分に「おもりを2つ落とした」とのメッセージを最後に通信が途絶えたことが判明しました。
この「おもりを落とす」意味合いについて、当時潜水を支援していた業者は証言の中で、「水深3300メートルで落とされた2つのおもりは合わせて30kg余りで、潜水艇が下降する速度を少しゆるめるため」だと説明し、「緊急事態が起きたことを意味するわけではない」とつけ加えました。
また「億万長者が2人乗っている状況からラッシュ氏が早めに速度を緩め、完璧な潜水になるようにしようとしたのだと思う」と述べました。
さらに、通信が途絶えた後、カナダの沿岸警備隊から「たたくような音」を感知したとして最初に共有された位置情報が、最後に確認できた場所から南東に100メートルの位置で、翌朝以降も南東方向に移動していたことから、当時海中や海底で漂流している可能性も考えられていたと混乱を振り返りました。
審理は27日まで行われ、MBIは事故原因や刑事責任の有無などについて報告書をまとめる予定です。
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