先週18日、中国南部の※深センで、日本人学校に通う10歳の男子児童が刃物を持った男に襲われ、翌日、死亡しました。

事件の発生から25日で1週間がたちましたが、当局は容疑者の男の動機など事件の詳しい背景について明らかにしておらず、現地で暮らす日本人の間には不安が広がっています。

深センで貿易関係の仕事をする30代男性は「事件のあと、1人で外を歩くときには周囲に不審者がいないか敏感になるようになった」としたうえで「深センはずっと暮らし続ける場所ではなくなってしまった」と話し、将来的に深センを離れることを検討していることを明らかにしました。

こうした中、日本人が多く住む地域を中心に安全対策を強化する動きも出ています。

深センに近い南部・広州にある、日本人向けのマンションの1つでは、スクールバスが到着する際に警備員の数を以前の2倍の4人に増やした上で、刃物による切りつけに耐えられる防護服や盾を導入したということです。

マンションを運営する会社の代表は「不安に思う日本人の方からの要望が寄せられている。そうした声を参考に少しでも不安が和らぐよう対応したい」と話していました。

※土へんに川

金杉大使 大連市トップと会談 安全確保や学校の警備強化求める

中国に住む日本人の間で不安が続く中、北京に駐在する日本の大使が多くの日系企業が進出し日本人学校もある東北部・大連市のトップと会談し日本人の安全の確保を求めました。

中国駐在の金杉憲治大使は24日、1700を超える日系企業が進出し日本人学校もある東北部・遼寧省大連を訪問し、市トップの熊茂平書記と会談しました。

この中で金杉大使は事件を踏まえ「日本の企業にとって対中ビジネスは大きな岐路にある。状況は極めて深刻であると言わざるを得ない」と述べ、事件が日中関係に影響を及ぼしているという認識を示しました。

そして、日本人の安全確保や日本人学校の警備強化を求めました。

これに対し、熊書記は「日本人の懸念は留意していて、非常に重視している」と述べた上で、日本人学校の登下校時などに警備を強化していることを説明しました。

会談のあと金杉大使は記者団に対し「本来こんなことが起きてはいけないし、二度と起こしてはいけない。中国側と力を合わせて安全を確保していかなければならないという思いを強くしている」と述べました。

中国SNSの根拠のない反日的投稿 当局は明確な規制措置発表せず

事件を受けて日本政府は中国のSNS上の根拠のない反日的な投稿を取り締まるよう求めていますが、これまでのところ中国当局は明確な規制措置を発表していません。

ただ、事件後、中国のSNS「ウェイボー」では、「日本人学校」に関連する検索結果が示されないようになっていて、中国当局が規制しているものとみられます。

また、事件を受けて動画投稿アプリを運営する企業1社が日本と中国の対立をあおる投稿に対して規制措置をとったと発表しました。

しかしこの動画投稿アプリではいまも「日本人学校を取り壊せ」といったアカウント名は存在するほか、別の動画投稿アプリでは日本人学校に関連する根拠のない投稿は数多く見られます。

中国ではことし6月に東部の江蘇省蘇州で日本人学校のスクールバスが襲われ、日本人の親子と中国人女性が巻き込まれた殺傷事件のあとも中国の複数の大手ネット企業が極端な民族主義を誇張する投稿などを規制する措置を相次いで発表していますが、日本人学校をめぐる根拠のない投稿は依然として見られる状態になっているのが現状です。

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