イスラエル軍の空爆を受けた建物で救助にあたる人々(1日、レバノン南部)=ロイター

イランが1日、イスラエルを約180発の弾道ミサイルで攻撃した。イスラエルは大半を撃墜し、反撃を警告した。中東の軍事大国同士の衝突激化を避けなければならない。双方に最大限の自制を求める。

イランは支援する武装勢力であるパレスチナ自治区ガザのハマス、レバノンのヒズボラの指導者らが殺害された報復とした。1年近くガザで続くイスラエルとハマスの戦闘が終わらないまま、戦線が広がるのを食い止めなければならない。

7月、ハマスの指導者だったハニヤ氏が暗殺され、イランはイスラエルの仕業と断じた。9月にはイスラエル軍がヒズボラの指導者ナスララ師を空爆で殺害し、続いてレバノンに地上侵攻を始めた。

イスラエルのレバノン侵攻は2006年以来だ。ガザ攻撃に続き、民間人を巻き添えにする戦闘が広がるのを憂慮する。

イスラエルが一方的に攻勢を強めて地域の緊張を高めるなか、イランが直接の報復を見合わせてきたのがこの夏以降の経緯だった。放置すればイスラエルが勢いづくと危ぶんだのか。ここでイランがイスラエルを攻撃したのは、反撃の根拠を与えたようなものだ。

同国のネタニヤフ首相はイランに「代償を払うことになる」と警告した。代理勢力でなく、イランの国土が標的になる恐れが強い。

原油先物価格は1日に一時、前日比5%も上昇した。イランは主要産油国で、ホルムズ海峡はエネルギー輸送の要路だ。本格的な衝突で原油供給が滞りかねないとの不安が市場で広がった。

イランはペゼシュキアン新大統領が米欧との対話を求め、イスラエルとの全面戦争を望まない姿勢を示している。ならばこれ以上の攻撃は無用だ。

両国間の4月の直接攻撃のように限定的な応酬で収まるかは、イスラエルの出方にかかっている。イランの核開発施設や石油施設を狙うとの観測が報じられた。核施設の危険性はもちろんのこと、石油施設攻撃の余波は世界経済に及ぶ。

イランの再反撃を誘うほどの強い反撃は、大きな禍根を残す。米国はイスラエル支持を改めて鮮明にしたが、最大の影響力を持つ米国こそが、自制を強く促す立場にある。報復の連鎖に歯止めをかけるため、抑制的な対応を国際社会が一致して求めるときだ。

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