イスラエル軍の攻撃による死者を悼むガザの人々(1日、ガザ中部)=ロイター

パレスチナ自治区ガザの戦闘は7日で1年になる。国際社会が訴える停戦が実現しないどころか、戦火は中東各地に広がり緊迫度を増す。自衛を名目に国際規範が崩れるのを憂慮する。戦闘の拡大と長期化を止めなければならない。

1年前にガザのイスラム組織ハマスが越境してイスラエルの市民を殺害、拉致し、同国軍はガザ攻撃を始めた。ハマスの蛮行は許されない。人質を解放すべきだ。イスラエルは自衛の権利を持つ。

しかし1年がたち、その行動が国際法に基づき人道に十分配慮しているのかが厳しく問われている。ガザの病院や学校までもが攻撃され、地元当局によると4万1千人以上が死亡した。

イスラエルのネタニヤフ首相が当初掲げたハマス壊滅、人質の奪還、将来ガザが脅威になるのを防ぐ――の3つの目標はいまも未達で、手詰まりは明らかだ。

ネタニヤフ政権は9月にレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの空爆を強め、指導者を殺害した。続いて地上侵攻した。ヒズボラ戦闘員の通信機器の一斉爆発はイスラエルの仕業と疑われた。空爆は民間人を巻き込んでいる。

イスラエルは、同国北部を攻撃し住民に避難を強いているヒズボラをたたくとしている。しかし無差別攻撃でありレバノンへの主権侵害だとの批判は免れない。

代理勢力の要人を次々と殺害されたイランは今月に入り、報復としてイスラエルを弾道ミサイルで攻撃した。自衛のためというが、国際法違反の疑いがつきまとう。

イスラエルは反撃を計画し、イランの石油施設を狙うとの観測がある。そうなれば世界経済への打撃は甚大だ。国から国への武力行使を禁じる国際規範の軽視をこれ以上、放置してはならない。世界の秩序を危うくする問題だ。

米国はイスラエルを止める影響力を持つ。しかし11月に大統領選を控え、ユダヤ系の支持を気にして圧力をかけきれない。

ネタニヤフ政権はそれを見透かしている。戦闘継続が政権維持に有利とみているのか。そんな欲が少しでもあるなら罪は重い。

ガザではなお100万人以上が家を追われ、物資不足に苦しむ。大勢の子どもが命を落とし、教育機会を奪われた。1年はあまりに長い。国際社会の無力を嘆く。

今はレバノンやイランが注目されがちだが、私たちはガザの人々の苦境を忘れてはならない。

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