松田大使は、ロシアによるウクライナ侵攻前の2021年10月に着任し、およそ3年間の任期を終えてまもなく帰国します。

帰国を前にした今月5日、首都キーウでNHKのインタビューに応じました。

この中で離任について「戦争は3年目に入り、現時点でいつ終わるか言えない状況にある。このタイミングで離任するのは、戦争の終結を見届けられないという意味で残念な気持ちだ」と述べました。

そして、これまでの日本の支援について、避難民への支援に始まり、エネルギー支援や地雷の除去などニーズに合わせて進めてきたと振り返りました。

その上で「ウクライナの復旧・復興を進めることで経済活動を徐々に戻し、輸出も行い、国庫の税収も増やすという、サイクルをしっかり作り上げるタイミングに来ている」と述べ本格的な経済活動の再開を後押しする段階だとして、今後は、日本企業も巻き込んだ支援に力を入れるべきだという考えを示しました。

また、ウクライナ軍はロシア西部のクルスク州への越境攻撃を続ける一方、ウクライナ東部ではロシア軍の攻勢で、2年以上にわたって守ってきたドネツク州の交通の要衝を奪われるなど相次いで後退を余儀なくされています。

これについて「東部の戦線のいくつかの場所でロシア側が攻勢をかけているのは事実だが、ウクライナ側は防衛ラインをしっかりと構築し守っている。前線を突破され、一気にロシア軍が西に来るという状況では決してない」と分析しました。

その上で「ウクライナを隷属させることを数日でできると豪語して始めたロシアの侵略戦争が3年目に入っていることは、大きな意味でロシア側の目的は失敗に終わった。ここを押さえないで、その時その時の戦況を評価すると、あたかもロシアが勝っているように見える」と述べ、全体像を踏まえて評価すべきだとしています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、侵攻を終わらせるためだとしてまとめた「勝利計画」を今月12日にドイツで開かれる首脳級会合で各国に示すとしています。

これについて、松田大使は「できるだけ多くの国がウクライナの立場を理解し、応援する。国際社会の力を結集しこの無益な侵略戦争を終わらせ、停戦和平に向けた動きにロシア側も誘っていくことが必要になる」と述べ、和平を実現するには、ウクライナが戦場で主導権を握るとともに外交努力を続けることが重要だと強調しました。

さらに、松田大使は、日本は戦後の国際秩序に守られ、利益を享受してきたとした上で、ロシアによる侵攻は、その秩序を揺るがしていると指摘しました。

その上で「この侵略戦争をこのまま放置する、あるいはウクライナ側が負けるようなことが起きれば、国際秩序はガタガタになり、また同じようなことをロシアは別の国に対してするかもしれない。あるいはロシアのまねをする国が出てくるかもしれない。ウクライナを支援し、ウクライナが自ら望む形で公正で永続的な平和を達成することは、国際秩序を守り、日本の将来の平和と安定、そして繁栄につながると確信している」と述べ、ウクライナ支援の意義を強調するとともに支援の継続の必要性を訴えました。

ゼレンスキー大統領「強力な2国間関係築いてくれたことに感謝」

ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、離任する松田大使と大統領府で会談したときの様子を撮影した動画をSNSに投稿しました。

この中でゼレンスキー大統領は松田大使に対し「日本とウクライナの強力な2国間関係を築いてくれたことに感謝したい。われわれには、かつて、このような強い関係はなかった」と述べ、これまでにない有意義で強固な関係を築けたとして、謝意を示しました。

さらに、日本がG7議長国として果たした役割に感謝したほか、勲章を手渡す様子なども撮影されています。

一方、松田大使はNHKとのインタビューで「ゼレンスキー大統領のわれわれに対する態度は日本、そして日本国民に対する大きな感謝、熱い気持ちの表れだと素直に受け止めている」と話していました。

その上でウクライナ大統領府の幹部の発言を紹介し「こんなにウクライナから物理的に遠く離れている日本という国に、強力に支援してもらえるとは正直に言って思っていなかっただけに、本当にうれしいし、勇気づけられる。そしてその日本の努力を支えている日本国民の一人ひとりに対しては感謝の気持ちしかないと、しみじみと言っていた」と明らかにしました。

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