【パリ=北松円香】フランス政府は10日、2025年度の予算案を発表した。大企業や富裕層への増税と雇用支援の縮小などの節約策を盛り込み、財政赤字の国内総生産(GDP)比率を5%に抑える。金融市場に広がる仏財政への懸念払拭を急ぐ。
2024年度の当初予算では財政赤字のGDP比は24年末に4.4%と見込んでいたが、税収の伸び悩みなどで6.1%に達する見通しだ。特段の手を打たない場合、25年にはさらに悪化して7%になる恐れがあった。
バルニエ首相は29年までに財政赤字を欧州連合(EU)基準に合わせてGDP比3%まで縮小すると表明しており、財政再建に向けた軌道修正が急務だ。
そこで25年度予算案では計600億ユーロ(約9兆7200億円)相当の収支改善策を盛り込んだ。失業率低下に合わせた雇用支援の縮小や少子化に伴う教員減、電気自動車購入支援の見直しや、物価上昇に合わせた年金給付額引き上げの先送りなどで歳出を抑制する。
売上高10億ユーロ以上の大企業や年収25万ユーロ以上の富裕層に対する、一時的な増税も実施する。企業からは80億ユーロ、富裕層からは20億ユーロの税収増を見込む。当初予算案には間に合わなかったが、航空券にかかる税率を引き上げ、新たにプライベートジェットも課税対象とする予定だ。
仏経済財務省は25年のGDP成長率は1.1%と、24年比横ばいにとどまると想定している。財政引き締めが伸び悩みの一因だ。
マクロン大統領が6月に国民議会(下院)を解散して以来、金融市場では仏財政への不安が高まる。
投資家は仏国債により高い金利を要求し、欧州金利の目安であるドイツ国債との差が広がってきた。「何も手を打たないと、国債の利払いが政府の最大の支出になってしまう」(アルマン経済・財務相)との危機感が募る。
25年度予算案は11日から国会で審議される。仏下院はどの党も過半数を占めない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となっており、成立までは紆余(うよ)曲折がありそうだ。
少数野党で中道右派の共和党に所属するバルニエ首相にとって、極右の国民連合(RN)や、下院最大勢力である左派連合の新人民戦線(NFP)との交渉は一筋縄ではいかない。
さらにバルニエ氏と与党の間にも不協和音が生じている。与党の下院代表となったアタル前首相は9日、予算案を「増税が多過ぎ」で「改革が足りない」と批判した。
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