9月11日、名古屋市で開かれた「韓国次世代モビリティ技術交流展」で、商品の説明をする韓国企業担当者=名古屋市のポートメッセなごやで
◆「外国企業は参入できない」は古い
主催した大韓貿易投資振興公社の劉正悦(ユ・ジョンヨル)社長のあいさつによると、2023年に日韓両国のメーカーが国内で生産した完成車は計1200万台超で、世界の約15%を占める。両国の主要産業である自動車や二輪車を巡る私の「常識」はこうだった。「日本の自動車・二輪車産業は系列が強固で、部品の技術は日本が世界一。だから外国企業は参入できない」 それは全く古い考えだった。交流展に参加した電気・電装関連部品メーカー「SAMBO MOTORS」(本社・大邱)の金鉉讃(キム・ヒョンチャン)チーム長は「既に日本の自動車部品メーカーに納入している。品質も日本と同レベルです」と胸を張る。共同事業体や企業合併を通じて得意分野を広げているという。 日本側も韓国企業に熱い視線を送っていた。来場した日本企業スタッフは、電気自動車(EV)の電池関連のメーカー出展が目当てだった。「電池は世界の主戦場。技術力のある企業を探している。韓国は従業員の給料が上がり、製品価格も上がった。価格ではなく技術に競争力があれば契約したい」◆14年前に300円だった最賃 今や日本超え
韓国の最低賃金の上昇は著しい。ニッセイ基礎研究所の金明中・上席研究員によると、2010年に円換算で時給300円程度だったのが近年は1000円を超え、日本の最低賃金平均を上回っている。 韓国メーカーは品質を上げ、日本で販路を切り開いていた。価格競争力の時代は過ぎ、技術力で勝負する時代になっていた。自身の古い常識を恥じ入るばかりだ。 もう一つはエンタメ分野。私の常識は「『推し活』は日本で盛ん」というものだったが、韓国の方がずっと先に行っていた。
◆大量の米、キッチンカーまで差し入れ
ソウル在住で、多くの映画やドラマの字幕翻訳を手がける金光英実さんの近著「ドラマで読む韓国」(NHK出版新書)で「米花輪(こめはなわ)」を知った。 韓国では「マスター」と呼ばれる熱心なファンが、「推し」のイベントに花輪とともに大量の米を贈る。米はイベント後に福祉施設などに寄付され「推し」の評判が上がる効果が期待できるのだという。米だけでなく、撮影現場にキッチンカーやコーヒー車を差し入れるというから驚きだ。 著書では韓国でのジェンダー対立の様子やフェミニズムの急進化も紹介。ソウル勤務を経験し、多少は韓国を知っていると思っていたが、変化の速さについていけていなかった。◆「まずやってみる」文化だから
意気消沈しつつ金光さんに電話し、韓国の変化について感想を聞いてみた。 「韓国はまずやってみて、問題があれば直せばよいという文化だから変化が速いのでは。戸惑うこともあるけれど、おもしろい」 金光さんの姿勢を見習い、変化を楽しまねば。常に自分の常識を疑い、新しい情報を読者に伝えていきたい。(篠ケ瀬祐司) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。