NATOの国防相会議は17日から2日間、ベルギーの本部で開かれます。

現地ではアメリカのオースティン国防長官が演説し、会議が始まりました。

今回の会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加する予定で、ロシアによる侵攻を終わらせるためだとしてまとめた「勝利計画」の内容を加盟国に説明し、理解を求める一方、加盟国はウクライナ支援の強化に向けて議論する見通しです。

会議に先立ってNATOのルッテ事務総長は記者団に対し「ゼレンスキー氏からはウクライナ東部の戦況について話を聞く。私からはウクライナが勝利しプーチン氏の思いどおりにならないよう、NATOが団結し必要なことは何でもやると強調する」と述べました。

また会議では、NATO加盟国の防衛産業基盤の強化に向けた協力や、ロシアとの国境に近いヨーロッパ東部の防衛態勢についても協議する見通しです。

さらに、国防相級としては初めて、インド太平洋地域のパートナー国との協議が行われ、日本から中谷防衛大臣も参加してロシアと軍事面での連携を深める中国への対応などをめぐって意見が交わされるものとみられます。

ロシアへの警戒強めるバルト三国

ヨーロッパ東部のうち、ロシアへの警戒を特に強めているのがバルト三国です。

バルト三国は第2次世界大戦中の1940年に旧ソビエトに併合され、その後、半世紀にわたって支配された歴史があり、いまもロシア系住民が暮らしています。

ロシア憲法では旧ソビエトのウクライナやバルト三国などで暮らすロシア系住民を「同胞」と規定し、プーチン大統領はこうしたロシア系住民の利益を保護すると繰り返してきました。

プーチン大統領はおととしウクライナへの侵攻を開始した際、ロシア系住民の保護を掲げ、侵攻後は、NATOやバルト三国に対しても、威嚇を繰り返しています。

このため、バルト三国の国々はロシアが住民の保護を口実に、介入してくるのではないかと懸念しているのです。

NATOはこうした懸念を払拭(ふっしょく)するとともにロシアに対する抑止力を高めるため、これまでバルト三国をはじめとするヨーロッパ東部に新たに部隊を配置したり、増強したりしてこの地域の防衛態勢を強化してきました。

独自に国境防衛の強化に乗り出したリトアニア

バルト三国の一つ、ロシアとベラルーシに接するリトアニアは、独自に国境防衛の強化に乗り出しています。

先月、ロシアの飛び地、カリーニングラードにつながる橋の手前に、およそ40個のコンクリート製のブロックを設置しました。

ロシアからの戦車部隊の侵攻に備えたもので、ブロックの重さはおよそ1.6トンあります。

この橋はこれまでリトアニアとロシアの国境付近に暮らす両国の住民が行き来するために頻繁に使われてきましたが、今では車両の通行が禁止されています。

住民は「以前は車で簡単に行き来ができたが、今は不便になりました」と話していました。

リトアニア政府は今月9日、カリーニングラードにつながる別の橋にも同様の措置を行ったと発表しました。

さらに、ことし8月にはリトアニア南東部、ロシアの同盟国ベラルーシとの国境近くにあるパブラデ基地に新たに拠点を設け、鉄やコンクリートでできた障害物の備蓄を始めました。

軍事侵攻の兆候を察知した場合、できるだけ早くこれらの障害物を前線に設置し歩兵部隊とともに防衛線を築くのがねらいです。

リトアニア政府は来年4月までに国境から30キロ以内の重要な幹線道路沿いなどに、こうした拠点を新たに27か所、整備する計画です。

パブラデ基地のシュータス第一工兵中隊長は「ウクライナのニュースを見ればわかるように、われわれは準備していると示す必要がある。ここに来るな、来るならわれわれは準備できているというメッセージだ」と話していました。

市民に広がる侵攻への備え

侵攻に備える動きは市民の間でも広がっています。

リトアニア国防省は先月、市民を対象に無人機の講習会を無料で始めました。

国防省によりますと、新たな募集枠を設けるたびに、わずか1日で定員になるほどの人気だといいます。

講習会を通じて市民が習得するのは、無人機で動く目標を追跡したり、搭載されたカメラを使って遠くの目標を鮮明に捉えたりする技術で、1年間でおよそ1000人が受講する見通しです。

参加した20代の女性の1人は「ウクライナで起きていることを考えると、Xデーが来た時のために何か役に立ちたい」と話していました。

また、30代の男性の1人は「戦争は起き得るので、準備が必要だ。私は確実に国を守る」と話していました。

講習会の責任者、リトアニア軍事アカデミーのギンタラス・バグドーナスさんは「戦時には当局が参加者に連絡を取り、偵察活動や国境監視、重要インフラの防衛などを担ってもらうことを想定している」と話していました。

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