【ジュネーブ=酒井ゆり】国連の女性差別撤廃委員会は17日、スイス西部ジュネーブで開かれ、日本政府が提出したジェンダー施策などに関する報告書を対面で審査した。対面審査は2016年以来、8年ぶり。日本政府からは内閣府の岡田恵子男女共同参画局長らが出席し、委員からの質問に答えた。

14日、スイス西部ジュネーブで、国連の女性差別撤廃委員会の委員(右)に日本の現状を訴える「DV虐待を許さない弁護士と当事者の会」メンバーら=酒井ゆり撮影

◆国連側「次に委員会が行われるまでには批准を」

 岡田局長は冒頭のあいさつの中で、過去3回勧告を受けている「選択的夫婦別姓」について触れ、「とても大切な課題ということは理解している。国民の意見や国会での議論も見ていきながら、司法の判断も踏まえて検討していく」と述べるにとどまった。  質疑では、日本審査の責任者であるネパールのバンダナ・ラナ委員が、人権を侵害された被害者が国内で救済されなかった場合、国連に訴えることのできる「選択議定書」について質問。女性差別撤廃条約を締約した189カ国中115カ国が批准しているが、日本は批准に至っていない。ラナ委員は「次に委員会が行われるまでには批准されることを望む」と述べた。日本政府担当者は「タイムラインに答えるのは困難だが、早期実現に向けて検討を続ける」と返答した。  委員会は、同条約に基づき設置され、各国の取り組みを監視する役目がある。政府の報告書やその質疑、非政府組織(NGO)からの意見も参考に審査。今月下旬には改善点を勧告する見通し。  女性差別撤廃条約は、あらゆる差別の撤廃を基本理念に1979年の国連総会で採択され、日本は85年に批准している。

18日、スイス西部ジュネーブで、「選択的夫婦別姓」について、「強い勧告が出ることを期待する」と話す一般社団法人「あすには」の井田奈穂さん(左から3人目)=酒井ゆり撮影

◆「夫婦同姓は女性の生活に悪影響を及ぼしている」

 【ジュネーブ=酒井ゆり】国連の女性差別撤廃委員会が日本政府の女性政策を審査する会合をスイス・ジュネーブで開いたことを受け、現地で傍聴した非政府組織(NGO)や市民団体が記者会見した。過去に勧告が出ている「選択的夫婦別姓」などについて、政府の回答が「検討する」にとどまったことに対し、関係者は委員会に「強い勧告を望む」と口をそろえた。  選択的夫婦別姓の導入を目指す一般社団法人「あすには」など4団体は18日に合同で会見。「あすには」代表理事の井田奈穂さんは、委員から「夫の姓を強いられることにより、社会的圧力がかかっている」「夫婦同姓は社会的な伝統でありながら、女性の生活に悪影響を及ぼしている」などと指摘されたことを紹介し「人権は必ず守られなければならない。来年には終止符を打つような勧告をしてほしい」と求めた。

◆「政府は以前と同じ回答を繰り返すばかり」

 「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)の柚木(ゆのき)康子共同代表らは、17日の審査終了後に会見。審査の印象について「委員は報告書や私たちの話をしっかりと聞いて質問してくれたのに対し、政府は以前と同じ回答を繰り返すばかりだった」と説明した。  人権を侵害された被害者が国内で救済されたなかった場合、国連に訴えることができる「選択議定書」の批准にも政府は「早期実現に向けて検討を続ける」と述べるにとどまり、柚木さんは「建設的な対話がなく残念」と述べた。  委員会は、女性差別撤廃条約に基づき設置され、各国の取り組みを監視する役目がある。審査は、政府の報告書や対面での質疑に加え、NGOの意見も参考にした上で、今月末までには改善点を勧告する見通し。 

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