韓国の情報機関である国家情報院は18日、北朝鮮の特殊部隊がロシア軍の部隊に駐屯していると発表した。ロシア側は北朝鮮からの派兵について認めていないが、ロシアと北朝鮮の協力関係は一段と強まっている情勢だ。ウクライナ侵略が長期化し兵士不足が深刻になっているロシアが支援を求めた可能性がある。
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ウクライナへの北朝鮮の派兵については、10月に入ってウクライナメディアは自国東部ドネツク州で北朝鮮の将校の死亡が確認されたと報じた。加えて、同国のゼレンスキー大統領もロシアの侵略行為に北朝鮮が関与していると表明していた。
推定1万2000人を派遣
韓国の国家情報院によると、北朝鮮の特殊部隊1500人余りがロシア軍の部隊に駐屯しており、派遣規模は総勢1万2000人にのぼると推定されるという。ウクライナだけでなく韓国の情報機関が発表したことで北朝鮮による派兵の信ぴょう性は一段と高まった。
ウクライナメディアによると、派兵される北朝鮮の兵士の配置先についてはウクライナ軍が一部地域を制圧するロシア西部のクルスク州が有力視されているもようだ。11月に最初の部隊2600人が同州に送られる予定という。
ロシア軍が前線に人員を割かれる中で、クルスク州の守備などに配置する可能性がある。北朝鮮の兵員が多く死傷すれば、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の統治に影響が出かねない。
ロシアは「回復不能な損失」25万人超
北朝鮮がロシアへの派兵を決めたとみられる背景には、長期化するウクライナ侵略によるロシアの兵士不足がある。
ロシアの独立メディア、メドゥーザは10月、ウクライナ侵略に伴うロシア軍の死者や重傷者を合わせた「回復不能な損失」は10月中旬時点で少なく見積もっても25万5千人を超えるとの分析を伝えた。
ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州で犠牲をいとわず攻勢を続け、制圧地域を拡大している。ウクライナが8月に越境攻撃したクルスク州でウクライナ軍の掃討作戦も続けており、従来は戦地派遣していなかった徴兵者も駆り出されているとの指摘も独立系メディアで伝えられる。
ロシアは足元では志願兵である契約軍人の採用を増やして不足する兵員を補充してきた。
プーチン大統領は2022年9月に部分動員令を発令し、30万人超を招集した。だが発令後には招集を回避しようとするロシア国民の出国が相次いだ。国民の懸念が強い動員令の発令についてプーチン氏はその後は必要ないとの考えを示し、契約軍人の採用で補っている。
ウクライナへの西側諸国の支援体制に影響する米国の大統領選を24年11月に控え、将来の停戦交渉を見据えてロシアは攻勢をかけているとの見方も出ている。北朝鮮からのウクライナへの兵士派遣が事実であれば、クルスク州でのウクライナ制圧地域の奪還などを急いでいる可能性がある。
朝鮮半島の緊張加速につながる懸念も
ロシアと北朝鮮は24年6月、有事の際の軍事介入条項を規定する「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。
プーチン氏は今月14日、同条約を批准する法案をロシア下院に提出した。11月とみられる議会での採択を経て大統領署名後に成立する見通しだ。両国の国内手続き後、批准書を交換した日に発効する。
ロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長は18日、SNS(交流サイト)で「(ロシアと北朝鮮の)立場は近い」と言及し、米国など西側諸国との対立が続く中で協力関係を深める考えを強調した。
北朝鮮がウクライナ侵略を続けるロシアを支援する一方で、ロシアも北朝鮮のロケット技術などを支援しているとみられている。北朝鮮による兵士の派遣が進んだ場合、見返りにロシアが北朝鮮の核・ミサイル開発を支援することも考えられ、朝鮮半島を巡る緊張が一段と高まることにつながりかねない。
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