夕方、「早く進め!」とばかりに、車のクラクションがあちこちで鳴り響く。ニューヨーク市マンハッタンは交通渋滞が日常の一部。ホテルの従業員は「この街で車を使う人はどうかしている。私は日本製のバイクを愛用しているよ」と得意顔で語ったが、運送やタクシー業界などにとっては死活問題だ。  実は、ある仕掛けで渋滞は大幅に緩和される見込みだった。州議会は交通量の多い日中、中心部に乗り入れる乗用車から15ドル(約2230円)を徴収する米国初の「渋滞税」導入を承認。だが、6月末の開始直前に民主党の知事が中止を命じた。

米ニューヨーク市マンハッタンの中心部で、日常的に発生している激しい渋滞(鈴木龍司撮影)

 渋滞税には、物価高にあえぐマイカー通勤者や宅配で乗用車を使う飲食業界などから批判の声が出ていた。米メディアは中止命令の背景を、大統領選と同日の連邦議会選へのマイナス影響を回避するためだと報じた。  渋滞にイライラを募らせ、信号が赤に変わろうとする交差点に強引に進入する運転手ら。その光景を眺めながら、思った。選挙が近づくと、賛否が割れる政策や国民の痛みが伴う増税の議論を避けがちな傾向は、衆院選が迫る日本の政治とよく似ている。(鈴木龍司) 

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