【ニューヨーク=竹内弘文】11月5日投開票の米大統領選まで2週間を切るなか、選挙結果の賭けサイトで共和党候補のトランプ前大統領の勝利予想が優勢となっている。金融市場でも米国債売りや金買いなど、トランプ氏勝利を織り込む動きを誘発している。賭けサイトにおける「相場操縦」疑惑も浮上している。
暗号資産(仮想通貨)で取引する予測・賭けサイト「ポリマーケット」では米東部時間の23日午後2時時点でトランプ氏勝利予想確率が64%で、ハリス副大統領が勝利するとの予想確率37%に27ポイントもの差を付けた。
8月下旬〜9月には両候補の勝利確率に大きな差はなかったが、10月初旬から徐々にトランプ氏の勝利確率が上昇してきた。選挙の行方を左右する激戦州でトランプ陣営が支持を広げているといった、米メディアの報道などが影響したようだ。10月上旬に始まった、米ドルで取引できるサイト「カルシ」でもトランプ氏の勝利予想がハリス氏を2割程度上回った。
賭けサイトにおけるトランプ氏優勢をみて、金融市場の参加者は「トランプ・トレード」に動いている。米長期金利の指標10年債利回りは上昇(債券価格は下落)して約3カ月ぶりに4.2%を突破。長期金利のチャートは、賭けサイトのトランプ氏勝利確率の推移と似た形を描く。金先物価格は史上最高値を更新した。
トランプ氏が掲げる大規模減税の継続は財政赤字の拡大を生み、関税引き上げは米国内におけるインフレ圧力につながる。トランプ氏が勝利すれば「米国債への信頼が揺らぎ、代わりに金(ゴールド)が強含む可能性がある」(米オアンダのケルビン・ウォン氏)との見方があるためだ。
世論調査では、トランプ氏とハリス氏の支持率はほぼ拮抗した状況が続いている。米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた世論調査の平均支持率では23日時点でトランプ氏が48%、ハリス氏が49%。1ポイントの差は世論調査の誤差の範囲内だ。
米大統領選は全米50州と首都ワシントンに人口比で割り振られた選挙人を各候補が獲得していく形式を取る。全米の総得票数が多い候補が当選するわけではないため、世論調査の支持率と賭けサイトの勝利者予想に差が生じてもおかしくはない。
ただ、一部の賭けサイトでは作為的に勝利確率を高めるのが狙いと疑われるような取引の存在が指摘されている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、ポリマーケットにおけるトランプ氏勝利予想の急伸の背景に、一握りの大口の取引が影響した可能性があると伝えた。4つの取引口座が計3000万ドル(約45億8000万円)規模を「トランプ氏勝利」に賭けていたという。
ブロックチェーン分析会社の調査によると、4つの口座はいずれも米国拠点の仮想通貨交換所で、賭けに用いる仮想通貨を得ていたという。米国内のグループがポリマーケットを舞台に組織的にトランプ氏勝利の予想確率つり上げをはかった可能性が示唆される。
ポリマーケットは以前に米商品先物取引委員会(CFTC)から罰金を科された際の和解条件で、米国居住者が取引できないようにしている。米ブルームバーグ通信は、大口取引の実行者が本当に米国外に居住しているか、ポリマーケットは確認作業を進めていると伝えた。
米連邦控訴裁判所が10月2日、選挙結果を対象とする賭けを合法とする暫定的な判断を下し、カルシなど金融規制当局の監視下にある金融業者が運営する賭けサイトでの政治賭博取引に道を開いた。非営利団体ベター・マーケッツのスティーブン・ホール氏は「悪意のある者たちにとって、選挙に介入し民主的なプロセスから離れて有権者に影響を与えようとする誘因を生み出す」と指摘していた。
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