ポーランドの国境付近ではウクライナに向かうトラックが長蛇の行列をなしている(3月、ポーランド東部)

ウクライナとポーランドとの国境付近で、ポーランドのトラック運転手らが道路を封鎖し、ウクライナのトラックの出入国を妨害する動きが長期化している。欧州連合(EU)がウクライナからの入域規制を緩和したため、ポーランド人は雇用や安価な穀物の流入に危機感を強める。

3月下旬、ポーランド東部のドロフスク国境検問所付近ではウクライナに向かう同国のトラック約800台が列をなしていた。ウクライナ人のトラック運転手に通行許可が出るのは1時間に数台程度にとどまり、長時間の渋滞が恒常化する。

EUはロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナのトラックに対して入域許可の取得を免除した。ポーランドのトラック業界は低賃金で運行するウクライナ人のトラックに仕事を奪われることを恐れ、2023年11月ころから抗議活動を始めた。すでに半年近くが経過する。ウクライナ産の安価な穀物の流入に反対するポーランド人の農家も少なくない。

春先のポーランド国境は雨が多く、渋滞の列に並ぶウクライナ人運転手らは暖房の効いた車内からあまり出ようとはしない。タブレットで映画を見ている者もいれば、家族に電話している者もいる。

渋滞が長期化する中、運転手目当ての弁当売りの姿も目立つ。ポーランド人のマレクさんが販売する弁当の価格は150フリブナ(約590円)でピロシキやボルシチ、サラダがつく。

渋滞に並ぶウクライナ人運転手のイリヤさんは24歳で、運転手となって現在5年目だ。両親がポーランドに出稼ぎに行っていたため実質的にポーランドで育った。

親戚が長年トラック運転手として働いたというイリヤさんは「私の勤務先では運転手が足りていない」と話した。特段の訓練もなくトラック運転を任されたという。

イリヤさんはポーランド人の抗議活動に対して「彼らはドイツの国境ではこうしたことはしないのに、なぜ我々に犠牲を強いるのか」と不満の声を漏らす。

キーウ(キエフ)出身の運転手ペトロさんも「彼らは私たちを締め出そうとしている」と憤る。

ウクライナ人運転手によると、ポーランドの抗議団体はトラックの行列が長くなるように狙って動いているという。行列に並ぶトラックの待ち時間が長くなれば輸送業務に支障が出る。

ポーランド人による国境封鎖の動きについてウクライナのゼレンスキー大統領は2月に「状況の打開には理性的な決断が必要だ」と述べた。

ウクライナ人運転手は抗議のため頻繁にポーランド警察に問題解決を依頼している。警察との対話が奏功して行列が短くなることもある。だが根本的な解決には至っていないのが実情だ。

この記事はキーウ在住のフリージャーナリスト、ワジム・ペトラシュク氏の取材を基に編集しました。

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