◆激戦7州の有権者に「カネ配り」キャンペーン
マスク氏は19日、自身の特別政治活動委員会(スーパーPAC)「アメリカ」を通じて、言論の自由や銃所持の権利を支持する請願書に署名した東部ペンシルベニアなど激戦7州の有権者に対し、「100万ドル」キャンペーンを始めた。左からトランプ氏(2024年7月、米ウィスコンシン州で)と、イーロン・マスク氏(2011年7月、福島県相馬市で)
連邦法は投票や有権者登録の見返りに金銭などを支払う行為を禁止し、違反した場合は最高で1万ドル(約150万円)の罰金と5年の懲役刑が科される。 報奨金はトランプ氏の政策に共鳴する人たちを投票に誘導する狙いとの見方が根強いが、あくまでも請願書の署名者を対象としている。米メディアによると、「違法性はない」とみる専門家がいる一方、一部の法学者には「請願書の署名は口実で違法だ」との意見もある。司法省もマスク氏側に連邦法違反の可能性を指摘したという。◆マスク氏は合法性を主張するが、捜査を求める声も上がる
渦中のマスク氏は「(報奨金は)どの政党に属していても、あるいは無党派であってもよく、投票する必要すらない」と合法性を主張。X(旧ツイッター)に共和党の有権者登録者数が増えていることへの称賛をつづるなど、批判を気にするそぶりはない。 大統領に返り咲けばマスク氏を行政改革の要職に起用する方針を示すトランプ氏は「私は関知していない」と語り、マスク氏の個人的な活動であることを強調している。 一方、ペンシルベニア州のシャピロ知事(民主党)は「法執行機関の調査が必要。捜査される可能性がある」と訴えるなど、民主陣営は選挙違反との批判を強めている。 電気自動車(EV)大手のテスラやXなどのオーナーを務め、保有資産2440億ドル(約36兆6000億円)を誇るマスク氏は、米誌フォーブスの米長者番付で3年連続のトップに立つ大富豪。7月に発生したトランプ氏への暗殺未遂事件直後に同氏への支持を表明すると、9月までの3カ月間で「アメリカ」に約7500万ドル(約112億5000万円)を投じ、トランプ氏の選挙運動を支えている。◆個人や団体からの献金を集めるハリス氏、広告攻勢かける構え
連邦選挙委員会(FEC)への報告によると、民主党の大統領候補ハリス副大統領(60)の陣営が9月に集めた献金は約2億2000万ドル(約334億円)で、トランプ氏の陣営の約6300万ドル(約95億円)の3倍以上に上った。資金面で優位に立つハリス氏は、選挙結果を左右する激戦州で広告を増やすなどして攻勢を強める構えだ。(ワシントン・浅井俊典) ハリス氏は若者や女性からの個人献金に加え、高齢不安があったバイデン大統領への献金を控えていた個人や団体からの献金が資金を押し上げている。トランプ氏は支持者の高齢化が進み、個人献金が前回2020年の選挙より減っている。こうした落ち込みを補うために、トランプ氏が頼みにするのはマスク氏ら富裕層の献金者だ。 連邦選挙運動法は現在、個人が1人の候補者に献金できる上限を3300ドルに制限しているが、スーパーPACと呼ばれる政治資金管理団体を通じた献金であれば、無制限に集金できる仕組みになっている。 約7500万ドルに上るマスク氏の献金はスーパーPACへのもので、トランプ氏陣営が9月に集めた献金額には含まれていない。 一方、ニューヨーク・タイムズ紙によると、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がハリス氏の支援団体に5000万ドル(約75億円)を寄付。米国では、一部の富豪が財力を背景に政治に影響を与えているとの批判も根強い。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。