ロシアに北朝鮮部隊派遣 国連安保理が緊急会合 激しい議論に
林官房長官「安保理で懸念を表明」
米韓の国防相 北朝鮮のロシアへ部隊派遣に懸念 緊密連携を確認
ウクライナ 前線でビラまくなど北朝鮮兵士らに投降呼びかけへ
ロ 北朝鮮部隊受け入れ「プロジェクト・ボストーク」と名付け
ロシアに派遣された北朝鮮の部隊について、国連の安全保障理事会では、緊急会合が開かれ、アメリカの代表が「もし北朝鮮の部隊がウクライナに入れば遺体袋に入れられて帰ることになる」と述べるなど、激しい議論が交わされました。国連の安保理では30日、ロシアに派遣された北朝鮮の部隊をめぐって、ウクライナの要請で緊急会合が開かれました。
このなかで、ウクライナのキスリツァ国連大使は最大で1万2000人もの北朝鮮の兵士が、ロシアの東部軍管区の5か所で訓練を受けており、それらの場所から、10月23日から28日にかけて少なくとも7機の航空機が最大2100人の兵士を乗せてウクライナ国境まで移動したとする情報を明らかにしました。その上で、「11月には北朝鮮の兵士がウクライナ軍に対する戦闘に直接参加しはじめると予想される」という見方を示しました。
理事国からは日本の山崎国連大使が「北朝鮮がロシアの侵略の共犯者になることは、ウクライナ情勢をさらに悪化させる」と非難するなど、懸念の声が相次ぎました。
一方、ロシアのネベンジャ国連大使は「ロシアと北朝鮮の軍事その他の分野での交流は、国際法に沿ったものだ」と主張し、「誰も禁止することはできない」と反論しました。
また、北朝鮮のキム・ソン国連大使は部隊の派遣には直接言及しなかったものの、「もしロシアの主権と安全保障上の利益がアメリカと西側によって脅かされ、何らかの対応をすべきだと判断された場合には、われわれはしなくても良い決定を下すことになる」と述べ、アメリカをけん制しました。
これに対し、アメリカのウッド国連次席大使は「今回の動きはヨーロッパだけでなく、インド太平洋地域の平和と安全保障にとっても大きな脅威だ」と述べたうえで、「もし北朝鮮の部隊がロシアを支援するためにウクライナに入れば、確実に遺体袋に入れられて帰ることになる。キム総書記には無謀で危険な行為を考え直すようにアドバイスする」と述べるなど激しい議論が交わされました。
林官房長官は午前の記者会見で「安全保障理事会の会合では日本を含む多数の理事国が安保理決議違反にあたるロ朝間の武器移転や、北朝鮮兵士のロシアへの派遣に対する懸念を表明した」と説明しました。その上で「最近のロ朝の軍事協力の進展の動きは、ウクライナ情勢のさらなる悪化を招くのみならず、地域の安全保障に与える影響の観点からも深刻に憂慮すべきだ。国際社会と緊密に連携して取り組んでいく考えであり、今回の安保理会合の開催は重要な機会だった」と述べました。
アメリカのオースティン国防長官は、韓国のキム・ヨンヒョン国防相と会談し、ロシアへの北朝鮮の部隊の派遣について懸念を共有するとともに、今後も動向を注視し、関係国と緊密に連携していくことを確認しました。
アメリカのオースティン国防長官は30日、国防総省で、定例の安全保障協議として、韓国のキム・ヨンヒョン国防相と会談しました。この中で、北朝鮮の部隊が、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに派遣されていることについて、意見を交わしたということです。会談のあとオースティン長官は「ロシアと北朝鮮の前例のないレベルの軍事協力の動きを追跡している。会談では、北朝鮮の部隊の派遣に深い懸念を共有した。危険で安定を損なう緊張の高まりに対し、同盟国とどのように協力していくかについて話し合った」と述べ、動向を注視し、関係国と緊密に連携していくことを確認しました。また、オースティン長官は、北朝鮮の部隊は、ロシア軍の制服を着用し、ロシアの装備品が支給されているとしています。
一方、キム国防相は、北朝鮮が部隊派遣の見返りに、ロシアに対して核兵器やICBM=大陸間弾道ミサイルなどの、技術的な支援を求める可能性があると指摘しました。このほか、会談では、北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、アメリカが核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」をめぐって協力を深めていくことなどを確認したということです。
ウクライナ政府の当局者がNHKの取材に応じ、ウクライナの前線に投入される可能性のある北朝鮮の兵士らについて「死にたくなければ投降すべきだと伝えたい」と述べ、前線でも空中からビラをまくなどして投降を呼びかけることを明らかにしました。ウクライナは、ロシアに派遣された北朝鮮の兵士が前線に投入される可能性に懸念を示していて、当局は、10月23日、「捕虜には3度の食事が提供される」などとして、北朝鮮の兵士らに投降を呼びかける動画を公開しました。動画を作成したウクライナ当局のマトビヤンコ報道官が30日、NHKの取材に応じ、「ロシアは戦闘に動員できる人材が不足する中、他国を巻き込もうとしている。これは小さな脅威でしかなく、成功しないだろう」と述べました。そして「北朝鮮の兵士に死にたくなければ投降すべきだと伝えたい」と述べ、北朝鮮の兵士らが前線に投入された場合、朝鮮語で投降を呼びかけるビラを空中からまくとしています。また、マトビヤンコ報道官は、北朝鮮の兵士が捕虜になった場合、ロシア側に捕らえられているウクライナの兵士と交換する交渉材料にしたいとする考えも示しました。
ウクライナ侵攻を続けるロシアは、北朝鮮の部隊の受け入れについて、日本語で「東方計画」を意味する「プロジェクト・ボストーク」と名付けるとともに、部隊の運用責任者に空てい師団の司令官を新たに任命するなど、本格的な運用を進めていることが関係者への取材で明らかになりました。関係者によりますと、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、北朝鮮の部隊の受け入れについて、日本語で「東方計画」を意味する「プロジェクト・ボストーク」と名付けたということです。また、ロシア側は、北朝鮮の部隊を運用する責任者に、2020年からロシア軍の第76空てい師団の司令官を務め、中東のシリアでも勤務した経験のある少将を新たに任命したということです。ロシアとしては、北朝鮮の部隊をどこに配置するかなど、北朝鮮側と緊密に連携して運用を進めるねらいがあるものとみられます。今回、ロシア側が、部隊の責任者も決めるなど、本格的な運用を進めていることが明らかになったもので、欧米各国や日本の政府は、北朝鮮の部隊の投入が戦況にどのような影響を与えるのか事態を注視しています。
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